UV TALK LETTER vol.2(2008) 分光光度計の構造

UV-Basic

1.分光光度計の測定原理

分光光度計の基本的な測定原理は,比較的簡単で理解しやすいものです。固体試料と溶液試料の場合に分けて説明します。

(1)固体試料

図1に示すように,まず,試料を置かない状態で,測定光束の強度Ioを測定します。次に測定光束上に試料を置いて,試料を透過した光束の強度Itを測定します。透過度Tは(1)式で表されます。

(1)式

透過度Tに100を掛けたものは,透過率(%T)となります。

(2)溶液試料

図2に示すように,溶媒を入れたセルを測定光束上に置いて,セルを透過した光束の強度Ioを測定します。次に,試料を溶媒に溶かした溶液を入れたセルを測定光束上に置いて,セルを透過した光束の強度Itを測定します。透過度Tは,同様に(1)式で与えられますが,溶液試料の場合は,(2)式で与えられる吸光度Absを使うのが一般的です。

(2)式

吸光度Absと試料濃度Cとの関係を表す(3)式をランベルト・ベールの法則といいます。
吸光度と濃度が比例の関係となっており,定量分析の基本となっています。

(3)式

ここで,εは試料の吸光係数,Lはセルの光路長です。
図2に示す測定方式は,セル界面からの反射や溶媒の吸収の影響を無くし,試料による吸収が測定されるようになっています。

図1,図2の測定光は,通常は単色光と呼ばれるものです。単色光とは,単一の波長の光のことです。単一といっても,スペクトルバンド幅(スリット幅)と呼ばれるある幅をもっています。例えば,波長500nm,スペクトルバンド幅2nmの単色光とは,499nm~501nmの間の波長幅(半値幅)の光を含んでいる光ということになります。単色光は光源から出た光を分光器に通すことにより得られます。

図1 固体試料の測定原理
図1 固体試料の測定原理
図2 溶液試料の測定原理
図2 溶液試料の測定原理

2.分光光度計の構成

前項の原理の説明から,分光光度計に必要不可欠な構成要素は,図3に示すように,光源,分光器,試料室,検出器であることがわかります。前項では試料に当てる光は単色光と説明しましたが,試料に白色光を当て,試料を透過した後に分光器を通すタイプの装置も存在します。試料の前に分光器がある方式を前分光,試料の後に分光器がある方式を後分光といいます。後分光方式は,アレイ検出器を使った高速測光型の装置等に採用されています。 次項からは,各構成要素について説明します。

図3 分光光度計の構成
図3 分光光度計の構成

3.光源

分光光度計の光源として望ましい条件を以下に示します。

a) 広い波長範囲に渡って明るいこと。
b) 時間的に安定していること。
c) 寿命が長いこと。
d) 安価であること。

これらの条件全てを完全に満たすものはありませんが,現在最もよく使用されているのは,可視・近赤外域用のハロゲンランプと紫外域用の重水素ランプです。
この両ランプ以外では,キセノンフラッシュランプが使われることがあります。

(1)ハロゲンランプ

発光原理は,一般の白熱電球と同じです。フィラメントに電流を流すことにより,フィラメントが高温となり発光します。ハロゲンランプは,電球バルブの中に不活性ガスとともに微量のハロゲン化物を封入したものです。フィラメントとして使われているタングステンは,高温により蒸発しますが,ハロゲン化物は蒸発したタングステンをフィラメントに戻す働きがあります。これにより,明るくかつ寿命の長い光源を実現しています。
ハロゲンランプの分光強度分布は,プランクの放射法則から,近似的に求めることができます。図4に,温度が3000Kのときの分光強度分布を示します。ハロゲンランプは,時間的安定性に優れ,寿命は2000時間程度,価格も比較的安価です。ハロゲンランプは,上記a)~d)の条件を高いレベルで満たしている光源といえます。

図4 ハロゲンランプの発光強度分布(3000K)
図4 ハロゲンランプの発光強度分布(3000K)

(2)重水素ランプ

重水素ランプは,数百Paの重水素(D2)をバルブに封入した放電光源です。図5に重水素ランプの分光強度分布を示します。一般的には,長波長側は400nmあたりが使用限界となりますが,長波長へ向かう減衰がゆるやかであるため,400nm以上の光を利用することも可能です。400nm以上の範囲には,輝線スペクトルも多数存在しています。その中でも,486.0nmと656.1nmの輝線スペクトルは特に強く,分光光度計の波長校正に利用することができます。短波長側の使用限界は,窓材の透過率により決まります。図5では,窓材に合成石英とUVガラスを使用した例を示しています。

図5 重水素ランプの発光強度分布 1)
図5 重水素ランプの発光強度分布1)

4.分光器

「分光」とは,様々な波長を含む光を,波長に応じて分けることを意味します。この光を分ける素子を分散素子といい,その代表的なものはプリズムと回折格子(グレーティング)です。分光器の分散素子としては,昔はプリズムがよく使用されていましたが,最近は回折格子が主流となっています。分光光度計によく使われている回折格子は,1mm当り数百~2千本程度の溝を平行かつ等間隔に引いたもので,その断面形状の例を図6に示します。

図6 回折格子の断面
図6 回折格子の断面

この回折格子に白色光を当てると,光の干渉により白色光は溝方向と垂直の方向に分散され,ある波長の光は特定の方向にのみ反射します。その様子を図7に示します。λ1~λ3は波長を示し,波長は連続的に変化していますので,回折格子に白色光を当てると,回折格子は虹色に見えます。CDの読み取り面に光を当てると,虹色に輝いて見える現象は,回折格子による分光のしくみと同じです。
分光器は,入口スリット,出口スリット,回折格子及びそれらに付随するミラー等から構成されます。各素子の配置により,いろいろな分光器が考案されていますが,もっとも簡単な構成である凹面回折格子を使った分光器の例を図8に示します。凹面回折格子を回転させることにより,出口スリットからは,異なる波長の光が射出されます。

図7 回折格子による光の分散
図7 回折格子による光の分散
図8 凹面回折格子分光器の模式図<
図8 凹面回折格子分光器の模式図

5.試料室

一般的な試料室の例を図9に示します。試料室中に2本の光束(図9の赤い矢印)が走っており,ダブルビーム分光光度計の試料室であることがわかります。分光器を出た単色光は,2本の光束に分割され試料室に入ります。ダブルビーム分光光度計に対して,試料室中に1本だけ光束が走っているものは,シングルビームの分光光度計となります。
図9に示しますように,試料室の中には,光路長10mmの角セルが設置されるセルホルダがあるのが標準的です。このセルホルダ部の交換,あるいは試料室ごと交換という形で,各種付属装置が取り付けられます。後述の検出器として光電子増倍管を使用している中級機以上の分光光度計では,大きな試料,あるいは大きな付属装置を取り付けるための大形試料室を用意しているものがあります。

図9 試料室
図9 試料室

6.検出器

試料室を通過した光束は最後の構成要素である検出器に入ります。
分光光度計用として紫外可視域にて用いられる代表的な検出器は,光電子増倍管(フォトマルチプライヤー)とシリコンフォトダイオードです。近赤外域用としては,専らPbS光導電素子が使用されてきましたが,最近ではInGaAsフォトダイオードを採用している装置が販売されています。高速測光型の装置に使われるアレイ検出器としては,シリコンフォトダイオードアレイ検出器があり,後分光方式と組み合わせて使用されています。
以下に,光電子増倍管とシリコンフォトダイオードについて説明します。

(1)光電子増倍管

光電子増倍管は,光電面に光が当ると光電子が放出される現象,すなわち外部光電効果を利用した検出器です。光電面から出た光電子は多段に組まれたダイノード(電子増倍部)で二次電子放出を繰返し,最終的に少ない光量で大きな出力が得られるため,光電子増倍管の最大の特長は,他の光センサーでは得られない際立った高感度にあります。光量が十分ある場合には,この特長はあまり生かされませんが,光量が減るに従い光電子増倍管の特長が生きてきます。このため,光電子増倍管は,高いグレードの装置に使われています。光電子増倍管の分光感度特性は,主として光電面の材料により決まります。分光光度計に良く使われているマルチアルカリ光電面の分光感度特性の例を図10に示します。

図10 光電子増倍管の分光感度特性 2)
図10 光電子増倍管の分光感度特性2)

(2)シリコンフォトダイオード

シリコンフォトダイオードは,光が当ることにより検出器自体の電気的性質が変化する現象,すなわち内部光電効果を利用した検出器です。昨今注目を集めている太陽電池も基本的な構造・原理はシリコンフォトダイオードと同じです。シリコンフォトダイオードは,光電子増倍管と比較して,安価,受光面における感度のローカリティが少ない,特別な電源を必要としない等の長所を持っています。感度面においても,光量が比較的大きい場合には,光電子増倍管と比べても遜色の無い測光データが得られます。シリコンフォトダイオードの分光感度特性の例を図11に示します。

図11 シリコンフォトダイオードの分光感度特性
図11 シリコンフォトダイオードの分光感度特性3)

1) 浜松ホトニクス株式会社重水素ランプカタログ
2) 浜松ホトニクス株式会社光電子増倍管カタログ
3) 浜松ホトニクス株式会社フォトダイオードカタログ

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