MS50周年記念特設サイト - ユーザーインタビュー 2020年11月号

島津MS製品のユーザー様の声を集めました。世界中の皆様からのメッセージをインタビュー形式でご紹介いたします。

Dr. Horacio Heinzen

Dr. Horacio Heinzen
Faculty of Chemistry
Universidad de la Republica de Uruguay

主な研究分野
食品・環境中の残留農薬及び汚染物質

1. 島津製作所をお知りになったきっかけを教えてください。

私が最初に入ったラボに島津の装置が設置されていたことを覚えています。それは1980年のことで,ラボではすでにFID検出器つきの島津GC-6Aが導入され,その装置は2005年まで稼働していました。その後も島津のクロマトグラフ,分光光度計や天秤などの装置がラボに導入されてきました。
1992年に日本政府から寄贈を受けた島津の質量分析計GCMS-QP1000は,本学にとって画期的な装置となりました。直接試料注入装置がついており,当時有機合成化学を研究する多くの研究グループを満足させることができました。また,20 eVでのイオン化が可能になったことも画期的なことで,70 eVでは実現不可能な一部の化合物の構造解明が可能となり,GCMS-QP1000はその後,約10~12年間にわたって非常にうまく稼働しました。
1998年,エッセンシャルオイルや脂肪酸などの揮発性天然物の構造を特定するために, FPD,NPD,ECDなどの選択的高感度検出器がクロマトグラフに追加され,その後15年間にわたって使用されたGCMS-QP5050も同じ時期に導入されました。

2. ご自身の研究分野をご紹介ください。また,どういった用途で島津製作所の分析装置をご使用いただいていますか?

ガスクロマトグラフと専用の検出器を組み合わせることで,ウルグアイでは全く新しい領域で研究調査を開始することができました。当時も今もウルグアイで使われる農薬がグローバルにどういう影響をあたえるか,よくわかっていないのです。
2012年まではFPD,NPD,ECD検出器を使って研究を行っていました。2012年,複雑なマトリックス中の残留農薬を定量するためにシングル四重極型GCMSを導入しました。
これらの進歩により,ようやくトリプル四重極型ガスクロマトグラフ質量分析計GCMS-TQ8040が導入され,その後すぐにGCMS-TQ8050にアップグレードしました。その装置は,検出能力,選択性及び確実性において劇的な変化をもたらすことができました。
当然のことながら,装置の導入は私たちの研究の範囲を広げ,非常に高感度での汚染物質の分析を可能にしました。例えば,PCBや農薬を一回の分析で当局が要求するレベルで検出ができるので,ある食品へのPCBや農薬の残留量が許容範囲内かどうか,または農薬が環境にリスクをもたらすかどうかを判断することができます。
さらに,例えば,母乳中のPCBもナノグラムオーダーの極めて低い濃度での検出が可能になりました。

3. 島津製作所の装置を採用いただいている理由をお聞かせください。

大学や研究グループのような学術機関が装置導入を検討する際,基本的に二つ側面を考慮します。一つは装置の頑健性です。同僚たちの使用経験や彼らの推薦は装置選定において非常に役立ちます。しかし,ほとんどの場合,最終的にはテクニカルサービスによって装置メーカーが決まります。
ウルグアイにおける島津のテクニカルサービスは特に優れていると思います。島津のスタッフは常に私たちの疑問,懸念事項や苦情をよく受け入れ,問題解決に尽力してくれます。私たちは常に島津装置を第一選択にする理由は優れた頑健性とテクニカルサービスであると考えています。

4. ご自身の研究分野における,質量分析技術の動向やトレンドについて教えてください。

農薬はおそらく最も興味深い分野の一つです。母乳,血液,尿や唾液のような生物体液中の残留農薬やその代謝物の検出に質量分析技術が応用されており,その分野における質量分析技術の発展の可能性が最も高いと考えています。

5. 島津製作所や質量分析技術の発展に関して,どのようなことを期待いただいているでしょうか。

今後は,食品や環境中での質量検出による未知化合物の検出を目指したいと思います。多くの場合,農薬や汚染物質の分解生成物は元の分子よりも危険です。したがって,より大きな健康リスクをもたらす可能性のあるこれらの代謝物の添加のメカニズムを検出・同定・理解するために前進することが重要です。ウルグアイではまだ研究されていないこの分野に進出できることを期待しています。

Dr. Horacio Heinzen