MS50周年記念特設サイト - ユーザーインタビュー 2020年4月号

島津MS製品のユーザー様の声を集めました。世界中の皆様からのメッセージをインタビュー形式でご紹介いたします。

Ruth Gordillo, Ph.D.

Ruth Gordillo, Ph.D.
Director, Metabolic Phenotyping Core,
Touchstone Diabetes Center,
University of Texas Southwestern Medical Center,
Dallas, Texas, USA.

主な研究分野
肥満と代謝性疾患の前臨床モデルに関するLC/MS/MS分析を用いたメタボロミクス研究

1. 島津製作所のことをお知りになったきっかけを教えてください。

私が最初に使ったトリプル四重極型質量分析計のフロントエンドとして島津の液体クロマトグラフがついていました。それは私が勤務していたアカデミアや産業界の様々な研究室での標準的な組み合わせになっていました。私たちのメディカルセンターでは2015年にはじめて,島津の超高速トリプル四重極質量分析計LCMS-8050を導入しました。高感度で堅ろうなこの装置が稼働して以来,私たちのラボでの主力機種としての地位を確立してきました。ここ数年でラボが大きく成長し,現在は追加で2式のLCMS-8060(全自動前処理装置CLAM-2000や超臨界流体クロマトグラフィーSFCを搭載したシステム)とQ-TOF型質量分析計LCMS-9030を導入しました。2015年以来,私たちの研究グループはShimadzu Scientific Instruments, Inc.と共同で,メソッド開発,サンプル前処理,メソッド検証や抗体医薬品分析を含めた多くの研究プロジェクトに取り組んでいます。

2. ご自身の研究分野をご紹介してください。また,どういった用途で島津製作所の分析装置をご使用いただいていますか?

Touchstone Diabetes Centerでは,糖尿病やその関連疾患と関係する細胞や組織の研究を行っています。我々のターゲットメタボロミクス研究を支えているのは島津の質量分析装置群です。私たちは,疾患モデルマウスのあらゆる種類の体液および組織を分析しました。我々のラボでは,糖尿病や非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD: non-alcoholic fatty liver disease)に関する数多くの臨床研究も行っています。島津の装置はテキサス大学サウスウェスタン・メディカルセンターのメタボロミクス・コア(UT Southwestern Metabolic Phenotyping Core)の一部として,研究コミュニティに分析サービスを提供するためにも使用されています。
私たちのターゲットメタボロミクス分析ポートフォリオには,リン脂質,スフィンゴ脂質,胆汁酸,遊離脂肪酸および遊離アミノ酸,ヌクレオシドおよび関連化合物,TCA中間体などの水溶性代謝物が含まれます。
高感度の島津装置は,非常に少量の生体試料でも代謝物の定量を行うことができます。

3. 島津製作所の装置をご採用いただいている理由をお聞かせください。

島津の質量分析装置は超高速スキャニング機能を備えており,高感度と堅ろう性に優れています。私たちの装置は数日間連続で大量な分析に使用されています。島津の液体クロマトグラフのモジュラーデザインは非常にフレキシブルであり,ラボのスペース拡張に適応するのが容易です。さらに重要なことに,モジュラーデザインは私たちの変化するニーズに応じて進化することができ,修理やメンテナンス性にも優れています。
最後に,私たちは島津の技術的・科学的サポートに大変満足しています。島津のエンジニアやテクニカルスタッフは顧客についての知識が非常に豊富で,熱心で献身的です。

4. ご自身の研究分野における,質量分析技術の動向やトレンドについて教えてください。

質量分析の分野では,感度はすでに最高レベルに達していると,私は考えています。私たちは,オンライン自動サンプル前処理ロボットシステムの利用は非常に有利であると考えています。ロボットシステムの活用は,人的ミスを排除し,ロボットがサンプルハンドリングを繰り返すことで再現性を向上させることができます。また,バイアルやピペットチップ表面への非特異的な代謝物吸着を減少させることによって,化合物の回収率を向上させることができます。サンプル調製プロトコルと装置パラメータを含むReady to use代謝物測定メソッドは私たちのラボの基本的なツールとなり,メソッド開発期間を著しく短縮しました。
そのほか,装置の小型化や,試料調製からデータ処理までの全自動化などもトレンドとして挙げられます。

5. 島津製作所や質量分析技術の発展に関して,どのようなことを期待いただいているでしょうか。

島津はAI(人工知能)を活用した全自動化分析プロセスの開発に力を入れていると思います。近い将来,このワークフローが実現し,サンプル調製から結果,データの統計解析処理まで,人間の介入が最小限に抑えられるようになると私は予測しています。また,機械学習できるソフトウェアの設計は臨床診断において大きな可能性を秘めています。

Ruth Gordillo, Ph.D.