MS50周年記念特設サイト - ユーザーインタビュー 2020年1月号

島津MS製品のユーザー様の声を集めました。世界中の皆様からのメッセージをインタビュー形式でご紹介いたします。

Stanley Hazen, MD, PhD,
Section Head of Preventive Cardiology & Rehabilitation,
Cleveland Clinic, USA

主な研究分野
LCMSによるバイオマーカー探索
- 腸内細菌叢と循環器代謝疾患

1. 島津製作所のことをお知りになったきっかけを教えてください。

25年以上にわたり,私たちは島津製作所のHPLCを使って解析研究を行ってきました。そして現在,島津製作所の質量分析技術は体外診断における定量分析や,新しい発見につながるパイプラインとなっています。

病気のリスクや治療の効果を示すバイオマーカーが開発されるにつれて,質量分析法はそれらを測定するためのより適切で実用的なツールとなってきています。今後,質量分析技術は病気の予防と治療のモニタリングの両方において,ますます大きな役割を果たすことになるでしょう。

2. ご自身の研究分野をご紹介してください。また,どういった用途で島津製作所の分析装置をご使用いただいていますか?

私は,心疾患のメカニズムの解明に焦点を当てた研究をしています。その中で,心疾患の発症に関係する動脈壁と血液循環の化学的な特徴を探るための最も重要なツールとして,質量分析法を採用しています。島津製作所のトリプル四重極型LCMSは,病気の診断,そして分析結果や治療効果のモニタリングをするための研究に使用しています。

3. ご自身の研究分野における,質量分析技術の動向やトレンドについて教えてください。

近年,質量分析およびノンターゲットメタボロミクスを用いて,心疾患の発症に関連する血中成分の特徴を発見しました。トリメチルアミン-N-オキシド(TMAO)とよばれる血中の化合物について,それがどこから産生されて,心疾患の発症につながるのかを調べたところ,この化合物は最終的に腸内細菌の働きによってのみ産生される代謝物であることが分かりました。栄養素が腸内細菌によって消化される間に,この代謝物が産生され,それが心疾患を引き起こしているのです。さらに最近では,この化合物の生成に作用する微生物酵素の阻害剤の開発に取り組み,それによって心疾患の治療的介入が可能になることを示しました。

これらの研究は,患者にとって2つの新しい恩恵をもたらしています。1つは,化合物の特定によって,心疾患発症のリスクを予測するための体外診断検査を実現したことです。TMAO検査は現在,臨床での利用が可能となり,実際に使用されています。2つ目は,この心疾患の発症との関連性の発見により,予防のための介入や治療法の開発につながる新しいターゲットが明確になったことです。私たちはすでに,動物モデルにおいて,血中のTMAO濃度を低下させ,アテローム性動脈硬化症および血栓症のリスクを低下させる薬剤を開発しています。そして現在,ヒトを対象とした臨床試験への移行に向けて取り組んでいます。

4. 島津製作所の装置をご採用いただいている理由をお聞かせください。

私たちが長年,島津製作所の装置を使用し続けているのは,装置の優れた機能だけでなく,技術的なサポートチームを含む島津全体が質の高いパフォーマンスを示してくれるからです。研究に関する取り組みをサポートする基本的な役割を果たすと共に,私たちのニーズを最適化して,私たちが望むアプローチや要求に装置を合わせるため,全力を注いで支援してくれています。

5. 島津製作所や質量分析技術の発展に関して,どのようなことを期待いただいているでしょうか。

このような研究は,医学や科学全般のいろいろな側面に貢献しています。質量分析法を心血管疾患のリスクを追跡したり,予測したりするための化学的特徴を同定するツールとして用いることにおいては,私たちは今,その最前線に立っていると思います。新たな発見のプラットフォームとして質量分析法を活用すること,それは人々の健康とその向上につながると考えています。