カーボンニュートラルに向けたCO2の再資源化の社会実装へ

今回のCustomer

谷口 育雄(たにぐち いくお)准教授
九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所

※掲載内容(所属団体,役職名等)は取材時のものです。

インタビュー

環境問題と聞いて、みなさんが思い浮かべるものは何でしょうか?気温や海水温が上昇し、豪雨や台風など私たちの生活に影響している「気候変動問題」や、レジ袋の有料化や紙ストローへの代替などに代表されるように、使い捨てプラスチックが原因である、「廃プラスチック問題」などを思い浮べた方も多いのではないかと思います。
今回は、この2つの重要な環境問題の解決策となる研究に取り組まれている、九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所の谷口准教授にお話を伺いました。

研究内容についてお聞かせください。
 
 

私の専門は高分子化学で、京都工芸繊維大学在籍時は、木村良晴名誉教授の研究室で助手として植物由来の生分解性高分子であるポリ乳酸(PLA)の研究をしていました。その頃から、島津製作所の装置(示差走査熱量計(DSC)、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)など)を使わせていただいていました。
現在は、CO2とバイオマス素材を原料とした、何度もリサイクルが可能であり、さらに自然環境中で分解するプラスチックを開発しています。開発中のプラスチックは、環境に良い3つの特徴があります。1つ目は、室温付近で加圧して成形ができるため、成形加工の際にエネルギー消費量が少なくて済み、CO2排出量を低減できること。2つ目は、CO2やバイオマス素材から作るため石油の枯渇問題にも適応していること。3つ目は、通常のプラスチックとは違い、加熱することなく成形できる、つまり熱分解されることがないため、無限にリサイクルが可能という点です。従来のプラスチックは、マテリアルリサイクルの際、熱分解により高分子が劣化し元の性能が出ませんが、現在開発しているプラスチックは、マテリアルリサイクルが可能な次世代のプラスチックとして期待できます。またこの研究開発では、島津製作所のフローテスタをプラスチックの低温流動確認などの評価のために、液体クロマトグラフのGPCシステムをプラスチックの分子量測定のために使用しています。
また、CO2問題については、(公財)地球環境産業技術研究機構在籍時より研究を始めており、火力発電所などの排ガスに含まれるCO2を選択的に分離するCO2分離回収技術についても開発を進めています。分離したCO2をどのように使うかということは、「2050年カーボンニュートラル社会」の目標実現のために大変重要で、現在は分離回収したCO2を先程紹介したプラスチックの原料やセメントの材料に転換するための研究をしています。

CO2活用に向けて社会実装を進められている具体的な取り組みをご紹介いただけますか?
 
 

排ガス中のCO2から炭酸カルシウムを効率的に作るスキーム

現在、産学連携でセメント工場から排出されるCO2を再資源化する技術開発を開始し、2030年までの社会実装を目指しています。セメント産業は、日本国内で火力発電所、製鉄所に次ぐ3番目のCO2排出源であり、排出量削減とCO2の有効利用に向けた研究を進めています。

このプロジェクトでは、セメントの生産時に発生するCO2を、水溶液中で炭酸イオンにして分離し、Ca含有廃棄物から抽出したCaと結合させて炭酸カルシウムを生成します。そして、これを再びセメントの原料として活用します。通常のアルカリ水溶液によるCO2分離回収では、分離したCO2を水溶液から加熱によって取り出す際に、膨大なエネルギーが必要となりますが、このプロセスではCO2を取り出すことなく直接使用するため、非常に小さなエネルギーで、さらに回収効率も高くその速度も大きいことが特徴です。この研究には、排ガス中のCO2の分離効率を調べるために島津製作所のガスクロマトグラフを使用し、また溶液中のCO2の定量には全有機体炭素計(TOC)を使用しています。現在、実用化に向けた実証実験の準備を進めています。

二酸化炭素分離実験装置

全有機体炭素計(TOC)

 
ご使用いただいている装置についてのご感想や、当社への期待について教えてください。
 

島津製作所の分析装置は、使い勝手が良く信頼性が高いので学生の頃から色々使用しています。最近はデザインも良くなったと思います。また、サポート体制にも満足しており、三条へはデモ測定などで何度もお邪魔しています。
現在使用しているフローテスタは、室温付近で加圧成形できる生分解性プラスチックの研究には無くてはならない装置で重宝しています。測定温度が室温以上ですが、冷却できるとより研究の幅が広がりますし、荷重も100 MPaまで印加できるとありがたいです。今後の要望としては、様々なCO2排出源に出向いてオンサイトでガス分析ができるポータブルのガスクロマトグラフなどの開発に期待しています。
TOCやガスクロマトグラフはCO2分離回収技術の研究開発にとても有用であり、カーボンニュートラル、そしてその先のカーボンネガティブへ研究開発を進展させて行きたいと思います。

 
 
 

研究室では当社製品のガスクロマトグラフ(GC-2014)、全有機体炭素計(TOC-L)+オートサンプラ、液体クロマトグラフ(LC-20シリーズ)、フローテスタ(CFT-500EX)、分析天びん(ATX324)をご活用いただいています。さらなる貢献に向けて、今後も製品開発を進めてまいります。本日は大変貴重なお話をありがとうございました。

 
 
 

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