光化学協会・賛助会員企業 共同セミナー2022
ー光(触媒)反応の基礎と光反応量子収率の求め方ー

  • 講習会

 

光反応および光触媒反応に関する研究を新しく始め,それらの反応効率を評価する場合には光反応量子収率を求める必要があります。しかしながら,その原理や計算方法は,初学者にとって理解が非常に困難であるとよく耳にします。今回開催しますセミナーでは,光反応量子収率についてわかりやすく解説し,従来の化学光量計を用いた方法と比較しながら,島津製作所が開発した光反応評価装置Lightwayによる評価法や,紫外可視分光光度計を用いた光触媒の物性評価についてご紹介します。また,光反応量子収率が関わる最新のトピックスをご講演いただく予定です。
本共同セミナーは,島津製作所 Tokyo Innovation Plaza オープンを機に,同会場のお披露目を兼ねて開催します。密を避けるため,参加人数に制限を設けさせていただいていますが,オンラインでの参加も可能となっております。皆様のご来場を心よりお待ちしております。

主催:光化学協会
株式会社 島津製作所

 

◆日  時
2022年12月12日(月) 10:30 ~ 17:00
 
【お申し込み締切り:現地参加の場合「12月7日(水)」,オンライン参加の場合「12月9日(金)」】
◆会  場

株式会社 島津製作所
Shimadzu Tokyo Innovation Plaza
〒210-0821 神奈川県川崎市川崎区殿町3丁目25番40号 >>アクセス

◇Shimadzu Tokyo Innovation Plaza とは?
川崎市に計測事業の新拠点を創設。羽田空港に近い好立地でオープンイノベーションを加速

◆参 加 費 光化学協会 会員: 3,000円・非会員: 6,000円
※現地参加、オンライン参加ともに同額
◆参加定員 現地参加:90名まで(定員に達し次第、締め切らせていただきます)
◆主  催 光化学協会・株式会社 島津製作所
◆申込方法
下記URLよりお申し込みをお願いいたします。
※お申し込みの際「現地参加」か「オンライン参加」のご選択をお願いいたします。
 
イベントは終了しました。

プログラム

時間 セミナー内容
10:30 - 10:40 開催のご挨拶
10:40 - 11:30 「光反応量子収率の基礎 ー量子収率と反応メカニズムの関係ー」

講演者:山﨑 康臣 先生(東京大学大学院 工学系研究科 応用化学専攻 西林研究室 助教)

「光子」は物質ではないものの,その粒子性から個数を数えることができる。そのため,光子は光化学反応における1つの反応基質と捉えることができ,原則として1個の光子は1個の基質を励起状態に変化させることができる。光化学反応では,「系に与えた(もしくは基質に吸収された)光子数」に対する「生成物の物質量」の割合を“量子収率”と定義し,反応に対する光子の利用効率を示す指標として反応評価に用いる。もちろん量子収率は高い方が望ましいが,用いた定義・測定方法・反応条件・反応メカニズムによって見た目の量子収率が大きく変わるため,異なる系どうしの量子収率を単純に比較することは難しい。本発表では,基本的な量子収率の測定原理・典型的な測定手法を概説した後に,反応条件・反応メカニズムによって量子収率が大きく変化するケースをいくつかピックアップし,量子収率の適切な扱い方を考察する。
11:35 - 12:15 「光反応評価装置による光反応量子収率の求め方」

講演者:丹下 祥之(株式会社島津製作所 分析計測事業部 Solutions COE グリーンソリューションU)

光反応量子収率の測定において,試料の吸収したフォトン数を測定することが不可欠である。当社光反応評価装置Lightwayを用いることで,正確かつ簡便に光反応過程における吸収フォトン数を測定することができる。ここでは,従来の化学光量計を用いた方法と比較しながら,Lightwayによる評価方法の特長と測定上の注意点を取り上げる。さらに,Lightwayの活用事例として,化学物質の光分解,フォトクロミズム反応,人工光合成の評価におけるアプリケーションを紹介する。
12:15 - 12:40 昼休憩
12:40 - 13:20 Shimadzu Tokyo Innovation Plaza ツアー A (B班は昼休憩)
※オンラインでのツアーはございません。オンライン参加の方は,ご休憩時間となります。
13:20 - 14:00
Shimadzu Tokyo Innovation Plaza ツアー B (A班は昼休憩)
※オンラインでのツアーはございません。オンライン参加の方は,ご休憩時間となります。
14:00 - 14:50 「色素増感型光触媒を用いたZスキーム水分解反応系の構築とメカニズム解明」

講演者:西岡 駿太 先生(東京工業大学 理学院 化学系 前田研究室 特任助教)

色素増感光触媒を用いた水の完全分解反応は,2種類の水素・酸素生成光触媒と電子メディエーターを用いるZスキーム型光触媒システムで達成されている。このシステムでは,色素増感光触媒に生成した励起キャリアが,望まない反応に消費されることが,水分解効率の向上の妨げとなっていた。様々な表面修飾により反応を制御することで,可視光照射下での水分解活性の飛躍的な向上に成功し,太陽エネルギーの水素への変換効率は0.12%に到達した。過渡吸収分光測定等による光励起キャリアダイナミクスの追跡により,表面修飾の効果の詳細を明らかにした。
14:55 - 15:35 「分光光度計を用いた光触媒の物性評価」

講演者:後東 あかり(株式会社島津製作所 分析計測事業部 Solutions COE グリーンソリューションU)

光触媒の性能評価には様々な分析手法が用いられるが,基本的な評価方法として分光光度法が挙げられる。本講演では分光光度計による光触媒評価方法と,適切な測定条件を選択するための測定における注意点を解説する。当社分光光度計を用いた評価事例も合わせて紹介する。
15:40 - 16:30 「量子収率200%の三重項励起子生成を可能にする一重項分裂:材料探索から光エネルギー変換・応用展開へ」

講演者:羽曾部 卓 先生(慶應義塾大学 理工学部 化学科 教授)

π共役分子を中心とした分子集合体の光化学は太陽光発電・光触媒・エレクトロニクス・医療などその対象範囲は極めて幅広い。特に,有機薄膜をはじめとする分子集合状態に関連した重大な問題点として集合体内部での迅速な励起子—励起子消滅等に伴う励起エネルギーの大幅な損失が挙げられる。一方,逆に集合体内での分子間相互作用を利用しながら一つの励起子を複数に分裂させることができれば,反応量子収率100%を遙かに超える系へ展開できる。本講演では分子集合体における多励起子生成反応の一重項分裂について,π共役分子による単純な二量体から無機材料(量子ドット・金属ナノ粒子等)を融合した多重分子集合体まで材料探索を中心に最新の研究成果と今後の展望を紹介する。
16:30 - 16:40 閉会の辞