熱分析とは,物質を加熱または冷却したときに,何度でもしくはどれくらいの時間で物理的な変化がおこるかということを調べる分析を総称したものです。どのような物理的変化をとらえるのかによって,それぞれ技法が定義されています。材料特性を評価するにあたっては,これらを目的に応じて使い分ける,もしくは複数の技法の結果を合わせて評価を行うといったことが必要になります。

 
熱分析の定義

物質の温度を一定のプログラムによって変化させながら,その物質のある物理的性質を温度の関数として測定する一連の技法
 
 
 
 

熱分析とは?

 

物理的性質に対する熱分析の測定法 

物理的性質によって複数の測定法がありますが,その中で最も一般的に用いられる測定法は以下のようになります。

物理的性質 得られる情報の種類 測定法 単位
熱量 転移温度,転移熱量,比熱容量,反応温度,反応熱量,熱履歴の検討など 示差走査熱量計
DSC
mW(=J/s)
温度 転移温度,反応温度など 示差熱分析
DTA
μV
質量 脱水,酸化,熱分解,蒸発,昇華など 熱重量測定
TGA
mg
寸法 熱膨張,熱収縮,ガラス転移温度,軟化温度 など 熱機械分析
TMA
μm
 

それぞれの技法で,測定対象となる現象や物性が異なります。

技法の
名称
測定できる
島津装置
現象/物性の測定対象
融解 ガラス
転移
結晶化 反応
(硬化・
重合)
昇華・
蒸発・
脱水
熱分解 熱膨張
熱収縮
熱履歴
の検討
比熱
容量
DSC DSC-60 Plus
※1
※1
DTA DTG-60
TG
(TGA)
TGA-50


 
※2
 
 
 
 
 
DTG-60
TMA TMA-60
※3

※1 DSCの熱電対は腐食ガスに弱いため,通常分解反応の測定は行いません。
※2 反応に伴い重量変化が起こるものが測定対象です。
※3 軟化として検出します。
※4 DTGはTGとDTAの同時測定装置です。

  • DSC は転移(融解,ガラス転移,結晶化),硬化などの反応や熱履歴の検討,比熱容量等の測定を行うことができます。
  • DSCは装置の汚染,腐食を避けるため,分解反応などでガスが発生するような測定については,通常は行いません。
  • TG は昇華・蒸発・脱水,熱分解等,重量変化を伴う現象を測定することができます。
  • TGとDTAの同時測定では,2つの測定法を組み合わせ,同時に測ることによって試料の熱的変化を推定することが可能です。
  • TMAはガラス転移,熱膨張,軟化,熱履歴の検討等,寸法変化を伴う現象を測定することができます。融解は固体試料が軟らかくなる(流動する)ため,一般的には軟化として測定を行います。試料の形状,種類や測定の目的に合わせて最適な測定モード(膨張,引張り,針入等)を選択する必要があります。