ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂の熱分解過程の測定

TG-FTIRでは温度変化に伴う試料の蒸発,分解などの質量変化をTG側で定量的に測定し,それに伴って発生するガスのスペクトルをFTIR側で測定することにより,定性分析も同時に行うことができます。におい成分の定性,微量添加剤の分析,組成分析,未反応物質の分析,熱分解機構の解析等への応用が可能です。

ポリエチレンテレフタレートを窒素および空気雰囲気中,20 ℃/minで加熱したときのTGおよびTGの微分曲線(D-TG曲線)をFig.1,Fig.2に示しました。また,それぞれに対応するIRスペクトルを3D表示でFig.3,Fig.4に示しました。空気中での測定ではFig.2のD-TG曲線で二つのピークが現れており,Fig.4のIRスペクトルにもこれに対応した吸収が確認できます。
Fig3,4のIRスペクトルの解析により,窒素中の測定ではCO2の他,安息香酸が発生ガスの主成分であることが推定されます。
一方,空気中の測定では2回に分かれたCO2の発生とは別に,前半の安息香酸の急激な発生と緩やかなエステル化合物の発生が推定されます。


Fig.1 窒素中のTG測定

Fig.2 空気中のTG測定

Fig.3 窒素中測定の3次元IRスペクトル

Fig.4 空気中測定の3次元IRスペクトル

原理

試料加熱によってTGから発生したガスは,保温パイプを通じてFTIR試料室に設置したガスセルへ導入され,スペクトルが測定されます。ガスセルを通過する試料は,赤外吸収の変化に応じてFTIR側でIRクロマトグラムとしてモニターされます。測定が終了した後に,時間(温度)毎のスペクトルを取り出して定性を行なうことが可能となります。

システムの特長と仕様

 

  • 1台の温度コントローラでガス取り出し口,保温パイプ,ガスセルの3ヶ所を独立して温調できます。(最高250 ℃)
  • 雰囲気ガスとして,He,N2,Ar,Air等をフローすることが可能です。ガス流量最大100 ml/min
  • TG温度範囲:室温~800 ℃
  • 1台のPCでDTG-60,IRAffinity-1ともデータ収集,データ解析が可能です。