• 転移や反応が重なっているような複雑なデータを分離可能
    ガラス転移とエンタルピー緩和などの反応が重なっている場合,従来型DSC測定では分離は不可能でしたが,温度変調DSCを使えばそれぞれを分離することが可能になります。
     
  • 比熱の測定がより簡単に
    比熱の測定が従来型DSC測定よりも簡単にできるようになります。
 
 

温度変調DSCシステムとは?

温度変調DSCは,定速昇温に温度変調を重ね合わせることで,従来型DSCでは分離できなかった複数の現象を独立して観測したり,比熱を簡便に測定したりすることができる手法です。

温度プログラムによる定速昇温(降温)に,正弦波の変調を重ね合わせて制御することができます。

測定後の解析によって3種の熱流データが得られます。

(1) DSC信号(トータル)
全熱流を示します。
これは従来型DSCで得られる熱流と同じものとなります。温度変調DSCで得られたデータから変調成分を除去することで得られます。

(2) DSC信号(リバーシング)
可逆熱流を示します。
熱流のうち温度変調に追従する成分であり,主に顕熱に相当します。温度変調DSCで得られたデータの変調成分から得られます。

(3) DSC信号(ノンリバーシング)
不可逆熱流を示します。
熱流のうち温度変調に追従しない成分であり,例えば結晶化,硬化,エンタルピー緩和など自発的に進行する熱過程は主にこちらに現れます。DSC信号(トータル)からDSC信号(リバーシング)を 差し引くことで得られます。

温度変調DSCで,こんなことができます!

1 ガラス転移の分離

温度変調に対して可逆的な現象と不可逆的な現象を分離することができます。

従来型DSC……可逆成分+不可逆成分が重なる
温度変調DSC……可逆成分はDSC信号(リバーシング)に,不可逆成分はDSC信号(ノンリバーシング)に現れ分離可能

例:緩和現象を伴うガラス転移を観察する場合
  温度変調で測定を行うとガラス転移による熱容量の変化はDSC信号(リバーシング)に,エンタルピー緩和による吸熱ピークはDSC信号(ノンリバーシング)に現れます。

以下のような測定にも有用です。
・融解時の再結晶化ピークの観測
・ポリマーブレンドである成分の結晶化ピークと他の成分のガラス転移の分離
・脱水ピーク中のガラス転移の観測
・硬化過程における熱流の顕熱成分やガラス転移の観測

2 比熱・熱容量測定

従来型DSCによる測定よりも簡単に測定が可能となります。
温度変調DSCは1周期で比熱を算出するため,ベースラインドリフトによる測定誤差がありませんので,精度が良くなります。

従来型DSC……空セル,基準物質,サンプルの3回の測定を行う
温度変調DSC……サンプルの1回の測定を行う

比熱の可逆成分を複素数で表示したり,その位相を表示したりすることができます。
また,比熱の不可逆成分を表示することもできます。

3 擬等温状態での比熱測定

温度変調DSC測定では,比熱を時間の関数として得ることができます。
これにより,従来型DSCでは測定できなかった,硬化・結晶化・ガラス状態のエージングなどの経時変化を捉えることが可能となります。

従来型DSC……定速昇温過程でしか比熱測定できない
温度変調DSC……同一温度で保持したままでも変調成分から比熱測定可能

例:エポキシ樹脂などの硬化反応を測定する場合
  温度変調DSCで擬等温測定をすると,硬化による発熱反応とともに反応前後の比熱変化を捉えることができます。

測定から解析までをトータルサポート

温度変調DSC解析を行うため,事前に校正用データを取得します。
校正測定の試料にはアルミナ粉末を用いて,サンプルと同じ条件で測定を行います。

サンプルの測定を行います。

「温度変調DSC解析」画面で簡単に解析を行うことができます。