基礎知識Q&A

<カンチレバー>

Q3-1
カンチレバーはどのようなものですか?
A
長さ100~200µmの,柔らかくて薄い板です。先端に探針がありますが目では見えません。
カンチレバーの例

カンチレバーの例

カンチレバー先端のSEM写真

カンチレバー先端のSEM写真

 カンチレバーの例を上図(左)に,先端の探針部分のSEM写真を上図(右)に示します。上図(左)のように,三角形状や短冊形状の片持ち梁の先端に半導体プロセス工程を応用して探針が一体形成されています。材質はSiN(窒化珪素)やSi(シリコン)製のカンチレバーが市販されています。典型的な値として,カンチレバーは長さが200µm,厚さが1µmであり,その先端の探針は長さが3µm,探針尖端の曲率半径は20nmといった大きさです。用途に合わせて様々な探針形状があり,また,電磁気特性や耐久性を持たせるために,探針に磁性体や金属膜,DLC(ダイヤモンドライクカーボン)などがコーティングされているものもあります。

 カンチレバーは非常に小さいので,1.5mm×2.5mm程度のベースから生えたような形になっており,交換の際にはベース部分をピンセットで挟んで取り扱います。

 コンタクトモード用のSiN製カンチレバーには長い(200µm)ものと短い(100µm)ものの2種類がありますが,バネ定数が違うだけで探針形状はどちらも同じです。長いカンチレバーの方は,光軸調整操作が簡単なことと,試料に対して与える力がより微小であるという特長があります。短いカンチレバーの方は,カンチレバーのてこ比が高いことから感度が有利であることと静電気に弱い装置では硬いカンチレバーが必要なことからこちらを選択します。
 カンチレバーには多くの種類があり,長さや厚みを変えた,より軟らかいカンチレバーや極限まで小さいカンチレバー,CNT(カーボンナノチューブ)を使用したカンチレバーなど,新しい技術開発も活発に行なわれています。弊社装置:SPM-9700は,各種のカンチレバーが取り付けられるように設計されていますが,種類によっては取り付かない場合や,専用のカンチレバーしか使えないタイプもあるので注意が必要です。

コンタクトモード用カンチレバー
SiN製  (1組34チップ)
LFM用カンチレバー
SiN製  (1組34チップ)
ダイナミックモード用カンチレバー(ハード,標準)
Si製  (1組20チップ)
ダイナミックモード用カンチレバー(ミディアムハード)
Si製  (1組24チップ)
ダイナミックモード用カンチレバー(ソフト)
Si製  (1組24チップ)
磁気力(MFM)システム用カンチレバー
Si製  (1組20チップ)
電流システム用カンチレバー
Si製  (1組20チップ)
フォースモジュレーションシステム用カンチレバー
Si製  (1組20チップ)
表面電位(KFM)システム用カンチレバー
Si製  (1組20チップ)
カーボンナノチューブ探針カンチレバー 詳細は別途お問い合わせください。

Q3-2
SPMにおけるカンチレバーの寿命はどれくらいですか?
A
新品と同様の分解能の画像を収集できるのは,一般に10~30画面程度と言われていますが,カンチレバーの材質や観察条件により異なるので一概に示すことはできません。

 カンチレバーの寿命を左右する要因は非常に多岐に渡り,一概に示すことはできません。1画面でダメになるときも一週間使えるときもあります。カンチレバー先端の探針は,走査にともなって多少なりとも劣化していきますので,新品と同様の分解能の画像を収集できるのは,一般に10~30画面程度と言われています。その後は徐々に探針尖端部が丸くなり,画像からシャープさが失われていきます。図1に,カンチレバーの良否によるAFM像の違いを示します。
 下図(a)が劣化していないカンチレバーを用いたAFM像であり,(b)は劣化したカンチレバーにより,同じ試料に対して同じ条件で撮像したAFM像です。本来,この基準試料(ニオブ蒸着粒子)は(a)のように細長い粒子が観察される試料ですが,(b)ではカンチレバー先端の探針部分の劣化により,分解能が低下して粒子が丸くぼやけて大きく見えてしまっています。

カンチレバーの良否によるAFM像の違い

 カンチレバーの劣化は,その材質や観察条件(走査範囲,走査速度,オペレーティングポイント値,対象試料など)によって異なります。一般にSiN製のものが寿命が長く,Si製のものが比較的短いようです。また,汚れの多い試料の場合は探針に汚れが移り,突然,画像が悪くなることもあります。一方,撮像したい分解能(画質)によっても,カンチレバーが使えるか否かは大きく変わります。このように,カンチレバーの劣化度は多くの要因によって変化し,使えるかどうかの基準も異なるため,何時間という寿命境界は引けません。実際には,見慣れている試料を測ったときに,異常な画像が現われたり分解能が変化したと感じるときが,交換のタイミングです。
 大きい走査範囲(低倍率)では古いカンチレバー,小さい走査範囲(高倍率)では新品を使用するなど,必要とする分解能によって使い分ければ経済的ですが,なかなかそこまで管理している研究室は少ないです。

Q3-3
SPMにおけるカンチレバーの交換時期は何を目安にすればいいですか?
A
通常は,必要とする分解能が得られない場合にカンチレバーを交換することになります。

 カンチレバーの劣化は画像で判断します。SPM観察像の画質は,カンチレバーの探針尖端の形状に大きく左右されます。探針尖端の劣化により,画像がぼやける(分解能が低下する)ことがありますが,これらは探針の磨耗,探針の破損,探針への汚れ(コンタミの付着)などが直接的な原因です。
 最も頻繁に発生し,また判断しにくい現象が探針の磨耗です。磨耗は走査中に徐々に進行し,探針尖端部が丸くなるという現象です。これは試料(表面凹凸,硬さ),走査条件(走査範囲,走査速度,オペレーティングポイント,フィードバックゲイン)によって摩耗の進行状況が変わるため,カンチレバーの交換時期を使用時間だけで決めることはできません。通常は,必要とする分解能が得られない場合にカンチレバーを交換することになります。
 探針の磨耗を防ぐには,走査速度を遅くする,オペレーティングポイントを小さくする,フィードバックゲインを適切な値に設定する,ことが一般的です。DLC(ダイヤモンドライクカーボン)をコーティングした探針やCNT(カーボンナノチューブ)を用いたカンチレバーであれば摩耗は少ないですが,高価であり,種類も少ないです。
 一方,探針の破損や探針への汚れの付着現象は突然生じるので判断は簡単です。例えば,試料交換の直後であることや,走査中に今まで見えていた画像が突然変化したことから判断できます。下図に,走査中に探針が汚れて分解能が低下した例を示します。

走査中に探針が汚れて分解能が低下した例

 以下に,カンチレバー交換の目安を挙げます。
(1) 標準試料が通常と違って観察されるなど違和感がある。
 通常観察している試料や装置付属の標準試料などを観察してみます。通常と違って観察されるような場合,例えば,試料の粒子径が予想されるよりも大きく観察された場合には,探針尖端が劣化していると考えられます。
(2) 画像に探針尖端の形状が現れる(アーティファクト)。
 探針尖端が特異な形状をしている場合には,例えば,丸い粒子を観察しても探針尖端の形状を反映して,一定の向きの楕円や方形,下図(a)のような三角形状が観察されたり,下図(b)のように形状が二重,三重に見えたりすることがあります。この現象はアーティファクトと呼ばれ,試料を回転させても常に同じ方向に現われることに特徴があります。なぜなら探針側の形状であるからです。

アーティファクトが見られる画像例

Q3-4
カンチレバーの取り付け時に,落としそうになります。うまく取り付けるのに便利な道具はないでしょうか?
A
カンチレバー取り付け治具を使えば,カンチレバーを滑り台に沿って動かすだけなので確実に行えます。

(1) 取り付け治具にカンチレバーホルダーを装着し,ホルダー固定つまみで,ホルダーを固定。その後,押さえ金具リリースピンを押します。(カンチレバー押さえ金具が持ち上がります)

(2) カンチレバーを滑り台に置きます。
◎ここでひと呼吸!カンチレバーを持ち直すことも可能!!

(3) カンチレバーを滑り台からホルダーに動かします。
(確実にカンチレバーがセットできます!)

[適用カンチレバーホルダー]
AFM用標準ホルダー,電流用ホルダー,微小電流用ホルダー,KFM用ホルダー
注)溶液セル用カンチレバーホルダーには使用できません。

(4) 押さえ金具セットレバーをゆっくり押すと,押さえ金具リリースピンが戻り,カンチレバーが固定されます。

[製品構成]
1) 取り付け治具本体 1
2) 調整用六角レンチ 4
3) 専用ケース   1
4) 取扱説明書 1
★特許出願中

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