理論段数とシンメトリー係数
カラムの性能を表わす大切な指標に,「理論段数」,「シンメトリー係数」があります。今回は,これら2つの指標に関するおはなしです。
理論段数とは?
理論段数(theoretical plate number,N)は,カラム効率を表す指標の一つで,カラムの取扱説明書や検査成績書などを見ると記載されている数値です。理論段数は,段理論における段の数を表わしており,一般に数値が大きいほど鋭いピークとなり,効率が良いカラムと判断されます。
ガウス分布(正規分布)において,理論段数は(1)式で与えられます。

ここで,tRは保持時間,σは標準偏差です。図1 に示しますようにガウス分布においては,ピーク幅W=4 σ,ピーク半値幅W0.5h=2.354 σという関係がありますので,これらを(1)式に代入すると(2)式,(3)式が得られます。


また,理論段数はピーク面積Aとピーク高さHから,(3)式のように表わすこともできます。

「JIS K0124:2011 高速液体クロマトグラフィー通則」には(2)式,(3)式,(4)式が掲載されていますが,一般には(3)式がよく用いられています。
シンメトリー係数とは?
シンメトリー係数(symmetry factor,S)(テーリング係数とも呼ばれる)は,ピークの対称性の度合いを示す係数で,図2 に基づき(5)式で与えられます。

理論段数は,ピークがガウス分布であると見なして,カラム効率を表わします。一方,シンメトリー係数は,以下のようにピークがガウス分布ピークか,テーリングピークか,あるいはリーディングピークかを表わします。
- S > 1 : テーリングピーク
- S = 1 : ガウス分布ピーク(左右対称)
- S < 1 : リーディングピーク
[参考文献]
1) JIS K0124:2011 高速液体クロマトグラフィー通則
2) JIS K0214:2013 分析化学用語(クロマトグラフィー部門)