Shimadzu Global Innovation Summit 2019

イベントレポート

アドバンスト・ヘルスケア※分野でのパートナーシップの促進を目指し,7月9日,10日の2日間にわたって「Shimadzu Global Innovation Summit 2019」を開催しました。 「Pioneering Partnerships for Advanced Healthcare」をテーマに,熱意溢れる若手から権威まで総勢21ヶ国93人の研究者を京都の本社に招きました。カンファレンスやポスターセッションを通じて最新の知見やアイデアが交わされ,活発な交流が生まれました。

2017年に続く2回目の開催となった今回は「この2日間を,グローバルな研究開発のためのプラットフォームを創出する場,自由な議論と関係性を創出する場,実りある協働と社会貢献をもたらす場とする」という,当社社長の上田輝久による宣言で開幕します。 6月に開所したばかりの共同研究拠点「ヘルスケアR&Dセンター」1階の共創・協働ラボ「KYOLABS」のお披露目を兼ね,センター内ツアーやポスターセッションなどの時間も設け,さらなるコラボレーションの促進を図りました。

※アドバンスト・ヘルスケア…分析計測事業と医用機器事業の融合によるシナジーを生かし,予防,診断,治療,予後管理,創薬などの幅広い分野に貢献する島津製作所独自のヘルスケア関連事業。

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アドバンスト・ヘルスケア分野のこれまでとこれから

サミットの冒頭では,分析計測事業部長の丸山秀三が登壇しました。Colin L Masters教授(メルボルン大学フローリー研究所)との共同研究成果であるアルツハイマー病変の検査手法や,高瀬圭教授(東北大学大学院)と共同開発した原発性アルドステロン症の副腎静脈サンプリング支援システム,および小林久隆主任研究員(米国国立がん研究所)と共同研究を進めているがん光免疫療法の研究支援など,アドバンスト・ヘルスケア分野における研究事例を紹介し,さらなるコラボレーション拡大への期待を述べました。

参加者同士の協働と成果

基調講演では「Shimadzu Global Innovation Summit 2017」をきっかけに出会った研究者同士のコラボレーション研究に関して,環境分野を専門とするKevin A. Schug 博士(テキサス大学アーリントン校)と病理学および細胞生物学の研究者Alex J. Rai博士(コロンビア大学アーヴィングメディカルセンター)が,その経緯と成果を語りました。

両氏は,2017年のサミットで出会って以来,高速液体クロマトグラフ,トリプル四重極型質量分析計を用いてタンパク質について研究を進め,がんのバイオマーカー探索に取り組んできました。

Schug博士は「島津製作所の装置は,従来の方法を超えた革新的なデータ取得を実現できる」とし,液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8050」「LCMS-8060」は,生体分子の詳細な評価には欠かせない機器だと評価しました。

Dr. Kevin A. Schug

Prof. Kevin A. Schug

講演動画 

Prof. Alex J. Rai

Prof. Alex J. Rai

講演動画 

さらに,同氏は「私達の研究は,がんに関して診断,予後,治療につなげる臨床応用を目指しており,製薬産業が新しい治療法を開発することなどを通して,最終的に社会や人々の健康に貢献していきたい」と語りました。

そのほか,Philipp Scherer博士(テキサス大学サウスウエスト医療センター)は臨床検査における質量分析技術の活用について紹介するなど,著名な研究者が分析技術と医用画像技術のシナジーを紹介しました。

Prof. Phil E. Scherer

講演動画 

新たな気付きをもたらすポスターセッション

ポスターセッションでは参加者による多様な研究活動が披露されました。参加者から57件,当社から15件,計72件の発表に対して質疑応答が飛び交い,新たな出会いと意見交流の場となりました。研究者の参加型投票によって6件の発表がポスターアワードを受賞し,翌日のプレゼンテーションで参加者に紹介されました。

受賞者の一人は,質量分析とAIを活用した腫瘍の迅速な同定に取り組むSilvia Giordano博士です。Giordano博士が所属するミラノ・マリオネグリ研究所は,当社の欧州イノベーションセンターで共同研究に取り組むパートナーです。がん診断の臨床応用に向けて,探針エレクトロスプレーイオン化質量分析計「DPiMS-2020」を使った研究に取り組んでいます。同製品は,科学技術振興機構(JST)先端計測分析技術・機器開発プログラムで山梨大学医学部の竹田扇教授らと開発した迅速病理診断支援システムの技術を転用して完成させたものです。この支援技術の実用化により,がん手術中の患者の負担軽減が期待されています。

Giordano博士は「若手研究者の私にとって,様々な研究者から関心と意見が寄せられたことは,これから研究を続けていくに当たって大きな刺激と励みになりました。異分野の研究者から新たな視点を提供されることは,将来の歩みをインスパイアする重要な機会です」と述べています。

Adam Noah博士(イェール大学医学大学院)による脳科学分野の研究もアワードを受賞しました。Noah博士は研究用光脳機能イメージング装置を使用して,対面する二者のアイコンタンクトが各々の脳活動に与える影響を調査し,録画された人の映像と対面するよりも人と人が直接に対面する方が脳活動を活発化させることを突き止めました。

このユニークな研究は,社会的行動と神経活動についての知見を深めるだけでなく,適応障害や社会不安のケアへの一助となることも期待されます。人と人とのコミュニケーションを扱った内容は,今後の社会においても注目すべきテーマとして選出されました。

Dr. Silvia Giordano (center left) at Poster Session

Dr. Silvia Giordano (center left) at Poster Session

Dr. Adam Noah during his presentation

Dr. Adam Noah during his presentation

 

サミットで交わされた活発な議論や交流は,アドバンスト・ヘルスケア分野におけるオープンイノベーションのさらなる加速を確信させるものでした。今回のサミットは,主催した当社にとっても,イノベーション創出をもたらす異分野融合の価値が改めて実感された場となりました。

アドバンスト・ヘルスケアに取り組む理由

先進国を中心とした人口構造の変化に伴い,少子高齢化や健康寿命の延伸などが喫緊の社会的課題となっています。また,がんや認知症,免疫疾患など,治療法が開発されていない疾患に対する医療ニーズ(アンメットニーズ)も高まり続けています。

X線画像診断のパイオニアであり,質量分析のリーディングカンパニーとして,私たち島津製作所は未来の医療を大きく変える先進研究・開発の最前線で,研究者とともに日々挑戦を続けています。

超早期診断,診断,治療,予後という健康のライフサイクルすべての段階に貢献し,時代も世界も超えた「健やかな毎日を送りたい」という願いの実現を目指しています。

 

共創の拠点「ヘルスケアR&Dセンター」

今回のサミットの会場にもなった「ヘルスケアR&Dセンター」は,社外のパートナーと当社がヘルスケア分野における新技術の研究に共同で取り組むための新たな拠点です。自由な発想でオープンイノベーションを推進し,新たなビジネスを生み出してゆくための場として構想されました。

研究の中心部となる2つのオープンイノベーションラボ「協働ラボ」および「共創ラボ」は,異なる専門領域を持つ研究者や企業をつなぎ,交流促進を具現化する空間を目指して,開放的にデザインされています。

2019年8月には国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構と共同研究契約を締結し,センター内に「食品機能性解析共同研究ラボ」を設置して,食品の健康機能性に関する研究を開始しています。

パートナーと手を携え,社会課題の解決へ

140年以上にわたる当社の歴史は,お客様だけでなく,多彩なパートナーと共に歩んできた結果です。複雑化,多様化する社会課題の解決には,産業・行政・学術の垣根を越えた連携が不可欠です。

私たちはいつの時代も,創業から変わらぬ社是「科学技術で社会に貢献する」を胸に,技術を磨き続けてきました。研究活動に無くてはならない分析計測機器,世界の医療を支える医用画像診断機器などを通じた私たちの取り組みは,この世界の持続的な成長のための挑戦です。

「人の健康」「安心・安全な社会」「産業の発展」という当社の事業領域で課題を解決するために,これまで共に歩んできたパートナーとはより強く手を携え,これから出会う人々にとっては掛け替えのないパートナーとして,島津製作所は歩み続けます。

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