イオンクロマトグラフ
水道水質分析用 高性能陰イオン分析カラムShim-pack IC-SA4による水道水分析
水道水質分析では,逐次水質基準の見直しと,それに伴う検査方法の改定が行われています。最近では水質管理目標設定項目であった亜硝酸態窒素が水質基準に追加されるとともに,妥当性評価が行われるようになり,分析の精度も重要視される動きがあります。さらに,イオンクロマトグラフの分野でも分析のスループット向上が求められています。
ここでご紹介しますShim-pack IC-SA4 は,水道水質分析専用に新規開発された陰イオン分析用高性能カラムで,「水質基準に関する省令の規定に基づき厚生労働大臣が定める方法(平成15 年厚生労働省告示第261 号),水質基準に関する省令等の一部を改正する省令(平成26 年2 月28 日厚生労働省令第15 号)」に基いた分析が可能です。
水質基準項目のイオンの分離

Fig. 1 には,水質基準項目に含まれる陰イオン5 項目(F,Cl,NO2,NO3,ClO3)および,環境水中に一般に含まれる無機陰イオンの分離例を,Table 1 には標準分析条件を示します。充てん材の平均粒子径の約3 μm への微細化と,保持特性の調整により,溶出の早いふっ化物イオンのピークをウォーターディップから十分離れるまで保持させるとともに,硫酸イオンの保持時間を20 分以内に収める分析を可能としました。
また,塩素酸イオンと近接して溶出する臭化物イオンもベースライン分離が可能です。
ケイ酸を含む試料の分析

山間部を流れる河川水を多く含む水にはケイ酸塩が含まれる場合があります。ケイ酸イオンは1 価イオンの弱酸としてカラムに保持されるため,溶離液組成によっては,ふっ化物イオンとピークが重なり,定量を妨害する場合があります。
Shim-pack IC-SA4 の標準分析条件は,このケイ酸イオンとふっ化物イオンの分離を改善しつつ,多成分同時分析可能な条件に設定されています。Fig. 2 には,ケイ酸イオンを含む水道水の分析例を示します。ケイ酸イオンはサプレッサ通過後の溶離液中ではイオン化を抑制されるため負のピークとして検出されます。
亜硝酸態窒素の定量
水質基準である亜硝酸態窒素は,他の水質基準項目と比較して対象となる濃度が0.004 ~ 0.040 mg/Lと低く,直前に溶出する塩化物イオンのテーリングの影響を回避するためにはUV検出器の利用が推奨されます。
Fig. 3,4 には,0.004 ~ 0.040 mg/Lの亜硝酸態窒素をUV 検出したクロマトグラムと検量線を,Table 2 には,作成した検量線を用いて各濃度の標準液を定量した結果と調製濃度に対する誤差率をまとめました。各濃度とも誤差率10 %以下の正確さで検量線が作成できていることがわかります。
Fig. 5 には,塩化物イオン濃度10 ~ 50 mg/Lを含む亜硝酸態窒素0.004 mg/LをUV 検出したときのクロマトグラムを,Table 3 には,亜硝酸態窒素の定量値と誤差率をまとめました。