粉博士のやさしい粉講座
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実践コース:測り方疑問解決編
 
レーザ回折式粒度分布測定装置
1 測定結果を決定づける要因
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レーザ回折式粒度分布測定装置(レーザ回折・散乱法に基づく粒度分布測定装置)を用いた粒度分布測定において、測定結果を決定づける要因を測定過程が進行する順番にしたがって列挙すると表1のようになります。

表1 レーザ回折式粒度分布測定装置を用いた測定において測定結果を決定する要因
測定対象(サンプル)および測定者のテクニックに関するもの
(1) 前処理
分散媒、分散剤、分散条件
(2) サンプリング
測定対象(サンプル)の採取および分散槽(サンプルバス)への投入方法
測定装置に関するもの
(3) サンプラ、フローセル間の懸濁液の循環
循環ポンプ、超音波振動子、攪拌機構
(4) 回折・散乱光の検出
光学系(光源、回折・散乱光センサの形状、素子数、配置)、信号伝達系(アンプ、ADコンバータ)
(5) 粒度分布計算
粒度分布アルゴリズム(計算手法)、コンピュータ(計算時間にのみ影響
各ステップ(測定過程)のうち、(1)および(2)は、測定対象(サンプル)および測定者のテクニックに関するものであり、測定装置に関するものは(3)~(5)ということになります。
 
これらの要因は、個々に独立したものではありますが、影響をおよぼす順序は確定しており、前のステップで生じた問題点を、後のステップで、リカバーすることはできません。
 
測定対象(サンプル)および前処理のテクニックに関わる問題を、測定装置において、正当な手法で補正することは、ほとんど不可能です。 不安定なサンプルを測定すれば、当然ばらつきは大きくなります。このような測定対象(サンプル)そのものの問題を、測定装置の方で、感度を低下させて、ばらつきの少ない安定したデータを出力したとしても、なんの解決にもなりません。場合によっては、測定の本来の目的から逸脱することにもなります。 
 
また、ハードウェアの性能を、ソフトウェア(粒度分布計算アルゴリズム)によって極限まで引き出すことはできても、それ以上の要求は不可能です。
例えば、パワーの小さな循環ポンプでは、粒子径が大きくかつ比重の大きな粒子を、充分に循環させることは困難であり、その結果、粒度分布が小さい方へシフトしてしまう場合があります。さらに、素子の数が少ない回折・散乱光センサを用いた場合、粒度分布の分解能は低下します。ソフトウェアによって、見かけ上の(粒子径範囲の)分割数を増やすことはできても、分解能の向上は望めません。また、回折・散乱光センサの素子の数を必要以上に増やしても、回折・散乱現象そのものに起因する分解能の限界も存在します。
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