光は気体と液体のように異なる物質の境界で屈折します(図1)。示差屈折率検出は光の屈折を応用した検出法です。

図1 光の屈折

図2に示差屈折率検出器(RID)の模式図を示します。示差屈折率検出器の光源から発された光はスリットを通過した後、フローセルを平行光線で通過します。フローセルを通過した光は受光部上にスリットの像を作ります。
フローセルは、使用する移動相をためておくリファレンス側と連続的に移動相が流れるサンプル側の2つの部分に分かれています。サンプル側に移動相のみが流れている時は両方のセルが同じ移動相で満たされているため、屈折は発生せず光線は直進します。しかしサンプル側に移動相以外の物質が通過すると、光の屈折率が変化し、受光部上のスリット像が移動します。RIDでは、この屈折率の変化によるスリット像の移動をモニターすることによって物質を検出します。
サンプル側とリファレンス側のセルには同じ移動相が入っている必要があるため、RID使用時には移動相の組成を一定で送液するイソクラティック溶離(Isocratic Elution)を適用する必要があります。

図2 示差屈折率検出の光学系

RIDは、移動相と異なる屈折率を示す全ての化合物を検出することができるため「ユニバーサル検出器」と呼ばれています。この検出法では検出の選択性がないため、十分なカラム分離が必要です。また、実験環境の温度変化や圧力変化の影響も受けやすく、検出の感度が高くありません。
しかし、物質による感度差がないため、分析結果からおおまかな物質の量比の情報が得られます。こうした特徴により、RIDは高分子の分子量分布測定や分取に使用されます。

図3にRIDを用いて市販オレンジジュース中の糖を分析した例を示します。
糖は紫外吸収をほとんど持たない物質であるため、これらの物質を分析する場合にはRIDや蒸発光散乱検出器(ELSD)を用います。これらの結果を比較すると、同じオレンジジュースでも糖の含有量とその比率が異なることがわかります。

図3 市販オレンジジュースのクロマトグラムの比較

(a)果汁100%濃縮還元オレンジジュース

(b)オレンジ味の清涼飲料水

このように糖の分析に用いられることが多いRIDですが、オリゴ糖を一斉分析する場合にグラジエント溶離が必要になる場合は、検出に蒸発光散乱検出器(ELSD)が用いられることもあります。

 
 

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