化学発光検出のはなし

分析基礎

LCtalk94号INTRO


 今回は,化学発光検出についてのおはなしです。化学発光検出 ・・・ というと,馴染みのない方も多くおられると思います。化学発光検出は,超高感度検出を可能にする方法で,HPLC での応用例はそれほど多くありませんが,基礎知識としてお読みください。

● 化学発光とは?

 物質が電磁波,熱,摩擦,電界,化学反応などから外部エネルギーを吸収した励起状態から,熱放射をともなわずに特定の波長の光を放射(発光)して基底状態に戻る現象を「ルミネッセンス(luminescence)」と呼びます(図 1)。この内,吸収するエネルギー源が化学反応である場合が,「化学発光(ケミルミネッセンス)」です。因みに,エネルギーとして光を吸収するのが「フォトルミネッセンス」で,蛍光やりん光が含まれます。また,ホタルや深海生物の発光は「バイオルミネッセンス」に分類されます。

図1 シラノール基のタイプ(孤立/ビシナル/ジェミナル)

図1 ルミネッセンス

● 化学発光検出の特長

 化学発光では,発光試薬による化学反応のエネルギーで物質を励起させるため,蛍光検出のように光源ランプ(キセノンランプなど)を必要としません。図 2 に, HPLC における化学発光検出の基本原理を示します。 化学反応ための発光試薬は,ポストカラム誘導体化と同様,発光試薬送液ポンプによりカラム溶出液に連続的に添加され,混合部で混合されます。生じた発光は,その強度が最も高くなる時点で光電子増倍管により測定されます。化学発光検出のフローセルは,できるだけ多くの光を光電子増倍管で受けられるよう,加工がしやすいふっ素樹脂チューブを渦巻状にしたものが多く用いられます。

図2 化学発光検出の基本原理(模式図)

● 化学発光試薬の例

 化学発光試薬には,励起された物質が自ら発光する直接発光タイプと化学反応により生じたエネルギーが他の物質を励起させる間接発光タイプがあります。
・直接発光タイプこのタイプの代表例が,古くから血液の鑑識に用いられているルミノールです。図 3 に,ルミノールによる化学発光反応を示します。ルミノールは,強アルカリ性下,過酸化水素などの酸化剤,熱などの金属触媒の存在により,青色の光(425 nm)を出します。

図3 3 官能性有機シランにより調製されたODS の一例

図3 ルミノールによる化学発光反応

 HPLC において,ルミノール反応は過酸化物(過酸化脂質など)や金属含有物質の分析に応用されています。

・間接発光タイプこのタイプの代表例は,しゅう酸ジエステル-過酸化水素系の化学発光です。図 4 に,しゅう酸ビス(2,4,6-トリクロロフェニル)(TCPO)による化学発光反応を示します。この反応では,TCPO と過酸化水素の反応により生じる活性中間体(1,2- ジオキセタンジオン)が二酸化炭素に分解する時,蛍光物質に励起エネルギーを与えます。

図4 しゅう酸ジエステル(TCPO)-過酸化水素系による化学発光反応

図4 しゅう酸ジエステル(TCPO)-過酸化水素系による化学発光反応

分析種が蛍光物質でない場合には,蛍光誘導体に変換して本法が用いられます。例えば,ダンシル化アミノ酸の例では,fmol(フェムトモル: 10-15 mol)あるいは数百amol(アトモル: 10-18 mol)の超高感度検出が可能となります。

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