グラジエント溶離のはなし

分析基礎

LCtalk93号INTRO


 HPLCでは,「グラジエント溶離(gradient elution)」をしばしば用いますが,意外と馴染みのない方もおられるようです。今回は,このグラジエント溶離の基礎についてです。

●グラジエント溶離とは?

 グラジエント溶離とは,移動相組成を連続的に変化させながら溶出させる溶離方法で,通常その分離モードで溶出力の強い溶媒を添加していくことになります。例えば,逆相モードにおいては,水/アセトニトリルの組成を90/10から20分間で50/50に変化させて溶出させる・・・といった感じです。この場合,水より溶出力が強いアセトニトリルを1分間に2%増加させていくことになります。一方,単一組成の移動相によって溶出させる溶離方法を「イソクラティック溶離(isocratic elution)」と呼びます。グラジエント溶離は,多成分や保持に差がある成分の一斉分析に有用な溶離方法です。

●グラジエント溶離の効果と留意点

 図1 は,逆相モードにより6成分をイソクラティック溶離とグラジエント溶離で分離した模式図です。

図1 イソクラティック溶離とグラジエント溶離による分離

図1 イソクラティック溶離とグラジエント溶離による分離

 イソクラティック溶離においては,前の4成分を十分分離できるメタノール濃度では後ろの2成分の溶出に時間がかかり, 後ろの2成分をはやく溶出できるメタノール濃度では前の4成分の分離が悪くなっています。ここで, グラジエント溶離の登場です。最初,低いメタノール濃度からスタートし,徐々にメタノール濃度を増やしていくことにより, 前の4成分の分離を保ちつつ,後ろの2 成分をはやく溶出することができています。そして,分析が完了するとメタノールを初期濃度に戻して,次の分析を行います。
 グラジエント溶離で注意しないといけないのは,最終濃度から初期濃度に戻してからの平衡化時間(移動相と固定相が平衡化する時間)を十分に取るとともに, この時間を一定にする必要がある・・・ということです。これを怠ると良好な再現性が得られません。平衡化時間は,分離モードや溶媒組成などにより異なりますので,再現性を確認しながら設定してください。

●高圧グラジエントと低圧グラジエントの違い

グラジエント溶離を行うための送液システムには,「高圧グラジエント方式」と「低圧グラジエント方式」があります(図2)。

図2 高圧グラジエント方式と低圧グラジエント方式

図2 高圧グラジエント方式と低圧グラジエント方式

 高圧方式と低圧方式は,異なる移動相が合流する地点が高圧か常圧(低圧)であるかの違いです。高圧方式では,各々の移動相は別々のポンプにより混合比率分の流量で送液された後(例えば, 流量1.0 mL/min, 2 液を1:1 で送液する場合, 2 つのポンプの流量は各0.5 mL/min),加圧下,ミキサーで合流します。一方, 低圧方式ではポンプの吸引工程時,ポンプ手前に設置された電磁弁が移動相の混合比率に応じて開閉し,各移動相は常圧下,電磁弁出口で合流します。
 高圧方式と低圧方式とでは,移動相合流後,カラム入口までの容量が異なり,グラジエント遅れ(プログラム上での混合比率に対する実際の混合状態の遅れ, 図3)に違いが出ます。

図3 グラジエント遅れ

図3 グラジエント遅れ

 低圧方式では,高圧方式と比較して,電磁弁で合流後のポンプシリンダー容量などが余計にあります。この容量のため,一般的に低圧方式の方がグラジエント遅れが大きくなります。一般的に,高圧方式は移動相の数だけポンプが必要だが、グラジエント遅れが小さい,低圧方式は1 台のポンプで複数の移動相(多くの場合,最大4液)に対応でき経済的だが,グラジエント遅れが大きい・・・ということになります。このため,同じグラジエント溶離条件でも,高圧方式と低圧方式で分離パターンが異なる場合がありますので,メソッド移管などの際にはご注意ください。
 

※ (関連製品) 最適なシステム容量により分析メソッド移管を低減,優れた装置間再現性によりラボ間での高いデータ互換性を確保する近未来型HPLC i-Series
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