目的成分を高純度で分取したいが現状の分離を移動相組成で改善するには制限があるような場合,カラムを複数本つなぐと有効です。・・・が,分取カラムは高価であり簡単に増やせず,カラム圧も高くなってしまいます。このような時,リサイクル分取(リサイクル分離法を用いた分取)を行なうと容易に分離が改善される場合があります。この方法は,カラムから溶出した目的成分を含むピーク部分を,同じカラムに繰り返し導入して,カラム長を長くしたのと同じような効果を得る方法です。理論上はカラム長さをn 倍すれば,カラム効率を示す理論段数はn に,分離度はn の平方根に比例して向上します。リサイクル分離法には,以下の二つの方式があります。

クローズドループリサイクル

図1. クローズドループリサイクル

図1. クローズドループリサイクル

リサイクルバルブの切換により,ポンプ,インジェクタを通って同じカラムに成分バンドを繰り返し導入し,分離の向上を図る方法です。カラム,検出器が1台という単純な構成から,通常リサイクル分取と言えば,この方法を指します。この方法で注意しないといけないのは,カラム外拡散です。成分バンドはリサイクル流路に入るとポンプ,インジェクタを通過するので,必ず通過部分の容積に応じた成分バンドの拡散を伴います。

オルタネートリサイクル

図2. オルタネートリサイクル

図2. オルタネートリサイクル

高圧6ポート2ポジションバルブに同種の2本のカラムを接続し,一方のカラムから溶出する成分バンドを他方のカラムに導入する動作をバルブ切換により繰り返し行い,分離を向上させる方法です。クローズドループ法に比べると,ポンプ,インジェクタを通過しないことから,カラム外拡散が小さく効率的ですが,カラムと検出器をそれぞれ2つ準備する必要があること,バルブ切換の圧力変動によりカラムにダメージを与えやすいことが欠点です。

リサイクルによる分離の向上

図3 に,逆相分離におけるクロ-ズドループリサイクル法の効果を示します。内径20 mmのODSカラムを用いて,ブチルベンゼン異性体(iso- およびn- ブチルベンゼン)を分離しました。初回溶出時のピークの理論段数は約26,000段,分離度は1.7ですが,11回目の溶出時には,それぞれ,150,000段,4.0へと大幅に向上しており,リサイクルの効果を実感できます。

図3ブチルベンゼン異性体のリサイクル例

図3ブチルベンゼン異性体のリサイクル例