「メソッド開発の効率化」
 ・・・「移動相の自動切換」と「超高速分析⇔汎用分析の自動切換」 が可能な高速メソッド開発システム

分析メソッドの開発では,pH や緩衝能,有機溶媒種といった移動相条件の最適化を行いますが,その検討には専門的知識や経験が求められることから,多くの時間や労力を要することになります。ここでは,メソッド開発の効率化を実現する高速メソッド開発システムについて解説します。

ハイブリッド型メソッド開発システム

本システムは,複数の移動相を自動的に切り換えできる「移動相自動切換型システム」と超高速・汎用の両分析が可能な「超高速分析・コンベンショナル分析自動切換型システム」とを組み合わせたハイブリッド型メソッド開発システムです。 図2はその流路図であり,超高速分析を利用して「移動相の選択とグラジエント条件の最適化」を行うことに加え,これまでの超高速分析システムでは難しいとされていた「高速メソッドから汎用メソッドへの移行」についても実現しています。(図1参照)

超高速分析条件から汎用分析条件への移行をサポートしている理由は,例えば,開発したメソッドは自社内あるいは委託先の工程管理部門や品質管理部門などへ移管しますが,そうした部門が超高速分析システムを所有しているとは限らず,このような場合は,超高速分析用メソッドを汎用分析用メソッドへ移行する必要があるからです。

メソッド構築の流れ

メソッドの構築は,後述のように,4つのStepに従って進めます。 Step1 では独自の評価式を用いてクロマトグラムパターンを数値化し,この数値(評価値)より最適な移動相を選択します。 また,Step2においても,分析結果に対して評価式を適用し,最適なグラジエント条件を選択します。 Step3では,質量分析計LCMS-2020を用いてピークの同定を行います。 Step4では,確立した超高速分析条件を基に,メソッド移行プログラムVer.2(下図3参照)を利用して同様の分離パターンを持つ汎用分析条件への移行を図ります。

■ Step 1:移動相の最適化 (超高速分析)

● 送液ポンプに各々4種類の移動相をセットし,最大16 通りの移動相を自動検討。

● 独自の評価式を用いてすべての分析結果(クロマトグラム)のパターンを数値化し,この数値(評価値)により最適な移動相条件を選定。
→図は最も高い評価値を得たクロマトグラム例です。

移動相の最適化 (超高速分析)

■ Step 2:グラジエント条件の最適化 (超高速分析)

● Step2 では,グラジエント条件を検討。(例:クロマトグラム(1)におけるAとBの領域を改善)

● さまざまなグラジエント条件から得られたクロマトグラムのパターンを数値化し,最適条件を選定。
→ 図は最も高い評価値を得たクロマトグラム例で,(1)のAとBの両領域が改善されています。

グラジエント条件の最適化 (超高速分析)

■ Step 3:LCMS-2020 によるピーク同定 (超高速分析)  

● Step3 では,シングル四重極型質量分析計LCMS-2020 を用いて,質量情報を用いた確度の高いピーク同定を実施。
→ LCMS-2020は,正負イオン切換時間が15msecであるなど,超高速分析に対応。

LCMS-2020 によるピーク同定 (超高速分析)

■ Step 4:汎用分析条件の確立 (汎用分析)

● Step4 では,(2)と同等な分離パターンを持つ汎用分析条件へ移行。

● メソッド移行プログラムVer.2(図3)に超高速分析条件を入力し,算出した汎用分析条件に基づいて分析。
→ (4)は(2)を汎用分析条件に移行した結果で,分析時間は約7倍に引き延ばされていますが,分離についてはほぼ同等なパターンを維持しています。


★メソッド移行プログラムVer.2は,テクニカルレポートダウンロードフォーム経由でご提供しております。

汎用分析条件の確立 (汎用分析)

 

図4 メソッド移行プログラムVer.2

自動化がもたらすメソッド開発効率の向上

分析作業を効率的に進めるためには,自動化が不可欠です。本システムは,図4のように,オートパージ機能を使って移動相の置換作業を自動実行できるため,移動相の交換毎にドレインバルブを手動で空けてパージする必要はありません。 また,ベースラインチェック機能でベースラインの状態を自動判定し,合格であれば(ベースラインが安定しているならば),分析が自動的にスタートします。
このように人の手を煩わすことなく,異なった複数の分析を連続的に実行できるため,メソッド開発の効率化が実現できます。

以上,本システムを利用すれば,効率的なメソッド開発が可能になり,さらには消費溶媒の大幅な削減(省溶媒化)を図ることができます。本システムの詳細につきましては「テクニカルレポートNo.33/34:メソッド開発の高速化によるR&D 効率の向上(1)/(2)」をご参照ください。