日常分析の留意点・・・イオンクロマトグラフ編

イオンクロマトグラフ関連

LCtalk53号LAB
その2

 近年,イオンクロマトグラフは,環境分野をはじめ幅広い分野で用いられるようになっています。 このイオンクロマトグラフを日常使っていく上では,HPLCと同様,いろいろ留意すべき点があります。 今回は,イオンクロマトグラフに特有なコンタミネーションと分離カラムの取り扱いについて解説します。

● コンタミネーション

 イオンクロマトグラフの対象成分は,塩化物イオンやナトリウムイオンのように,環境中に大量に存在しているものが多く,それらの影響を排除して高感度分析を行うときには試料のハンドリングを含め細心の注意が必要です。 ラボで超純水製造装置により得られる水は,無機物イオンをほとんど含まない18MΩ以上の超純水ですが,この水を分析した場合でも塩化物イオンなどがコンタミネーションが原因で数μg/L程度検出されることがあります。

クロマトグラム上で検出される1ppb (1μg/L) のピークは,1mLの試料バイアル中では10-9gオーダーの汚染に相当します!

 コンタミネーションには,
  1) 試料の汚染
2) 試料注入装置のキャリーオーバー

の2通りが考えられます。 バイアルを取り替えて変化があるようであれば,試料のハンドリングによる汚染が考えられます。

 塩化物イオン,ナトリウムイオンが検出される場合には人的な汚染が考えられます。

 試料バイアルがセプタムタイプの場合には次の点に注意することでコンタミネーションを防止することができます。

1) セプタムは (汗ばんだ) 素手で触らない。
2) バイアルの内部を超純水で洗浄し,試料で共洗いをする。
 上記の1),2)を行っても改善しない場合は...
3) セプタムの外側を洗浄する。
を試してみる価値はあります。
コンタミネーション


 また,試料の前処理操作を行う場合には,必ず操作ブランクをとることが必要です。 使用する試薬類からの思わぬ汚染も見つけることができます。 予期せぬピークが検出された場合には,それが,どの程度の汚染量に相当するか?を考えて見ることも大切です。

● カラムの取り扱い

 イオンを分離するために使用するカラムには,固定相として,イオン交換基を修飾した充填材を使用するため,逆相分析で使用するODS系のカラムに比べ親水性が高い特性をもちますが,分析を繰り返す内に,分析試料中の疎水性物質がカラム内部に蓄積され,これが悪影響を及ぼす場合があります。
また,使用中の容離液 (移動相) では溶出しないような多価イオン (価数の大きいイオン) も存在します。 カラムの取扱説明書には疎水性物質や多価イオンを溶出させるための洗浄方法が掲載されていますが,洗浄によりどのような場合でも状態が改善するとは言えません。

 多価イオンの洗浄は,溶離液濃度を高くしますが,高濃度にすると試薬が溶解しない,といったこともあります。 この様な場合は,組成比を変えて溶出力を上げる工夫をします。
陰イオン分析でカルボン酸と塩基を組み合わせた移動相の場合には,塩基の濃度を上げることでカルボン酸の解離が促進され,溶出力が増します。 この方法は移動相のアレンジにも使用できます。

溶出力の調整



 イオン交換カラムは,表面が親水性であるため,疎水性物質が吸着しても,低濃度の有機溶媒で洗浄が可能です。 分析試料は千差万別のため,イオンクロマトグラフでは検出できないさまざまな物質が含まれています。 この中には,洗浄液中の有機溶媒で変性してしまいカラムから出てこない場合もあるので,使用する有機溶媒にも注意が必要です。

カラムを洗浄することでかえって状況を悪化させることもありますのでご注意ください!

また,カラムを洗浄する時期は

  1) カラム圧が高くなってきた時
2) ピーク形状が悪くなってきた時

が一般的ですが,いずれもユーザー側での管理基準によります。(管理基準は,例えば,使用開始時と比べて「圧力が1.5倍,または理論段数が70%」などと決めることがあります)

 ベースライン変動が大きくなったので洗浄する・・・という話をよく耳にしますが,電気伝導度をモニターしているイオンクロマトグラフで,カラムの汚染によりベースライン変動が大きくなることはあまり考えられません。 カラムからイオン性物質が連続的に溶出している,ということになるからです。 検出器の電極部分の汚れによる伝導度の乱れや温度変化が原因であることが多く,カラムをはずして有機溶媒で流路洗浄すれば直ることも多々あります。

 ピークが完全に2つに割れたり,ショルダーピークとなった場合には,カラム内部に隙間が出来た可能性があります。 この場合は洗浄しても回復はしません。 カラムに衝撃を与えたり,急激な圧力変化や高圧をかけた時に劣化が発生します。

流路内の隙間がピーク変形を生じる


 未知試料注入時に,一時的に圧力が上昇することもありますので注意が必要です。 送液ポンプの圧力リミット機能を使うことでカラムの保護ができますのでぜひお使いください。 (Ie)

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