LCMS関連

LCtalk46号INTRO

はじめに

 現在,液体クロマトグラフィー質量分析計(LC-MS)は 製薬・環境・食品・工業材料など,幅広い分野で広く普及しつつあります。 今号よりLC-MSについて解説していきます。

LC-MSの長所って?

  一般的にLCでは試料中の各成分の固定相と移動相に対する親和性(保持力)の差によって成分を分離し,成分の性質によってUV,蛍光,電気伝導度などで検 出します。 これら検出器では,物質の定性は主に保持時間で,定量はピーク強度・面積で行います。 クロマトグラフィーは分離能力に優れていますが,多成分同時分析など複数の成分がほぼ同時にカラムから溶出する場合には確実な定性・定量が困難になりま す。
 一方,MSは試料成分を様々な方法でイオン化させ,得られたイオンを真空中で質量と電荷の比(m/z)によって分離し,各イ オンの強度を測定する高感度な検出法です。 得られるマススペクトルは,ある質量のイオンがどの程度存在するかを示すことができますので,定性分析の大きな助けになります。 質量は分子に特有の情報であり,MSによりこれらの情報をダイレクトに得ることができるからです。 ただしこれは単一成分を測定した場合であり,複数成分が同時に注入された場合,スペクトルの解析が極めて難しくなります。
 LC-MSは分離能力に優れたLCと定性能力に優れたMSを結合した装置で,スキャン測定より得られるマススペクトルでは溶出成分に分子量と構造情報を与え,他のLC検出器より得られる保持時間による定性を補完します(図1)。

 

クロマトグラムとマススペクトル
図1 クロマトグラムとマススペクトル

またSIM(選択イオンモニタリング)測定では,質量という選択性の高いパラメーターを用いて検出します。
仮にLC分離が不十分でも,夾雑物質の影響を回避した定量分析を行うことができるのです。 対象物の広さと選択性を兼ね備えているという点でLCの検出器として優れた特性を有しています。

 

GC-MSと比べて

  ガスクロマトグラフィー(GC)においては, 比較的早くから質量分析計が検出器として用いられており,その有益性は広く認められています。 物質の分離・定性といった点でGCMSは有効な手段ですが,分析可能な試料は比較的低分子量の気体または揮発性化合物,熱安定性の高いものなどに限られて きます。

一方でLCでは,移動相(液体)に溶解さえすれば,GCMSでは不得意な成分である難揮発性あるいは熱不安定な化合物の分析が可能です。 すなわち,LC-MSには分析試料の適用範囲が広いといった利点があります。

LC-MSの装置構成

 質量分析計は,試料導入のための機器(HPLC,GCなど),これをつなぐインターフェイス部分,試料をイオン化するイオン源,生成イオンを効率よく導入する静電レンズ部,イオンをm/zによって分離する質量分析部,分離したイオンを検出する検出部から構成されます。
  イオンの分離法により様々な種類が有りますが,ここでは一般的にLCMSの検出器に採用されている大気圧イオン化-四重極型MSの構成を示します(図 2)。 大気圧イオン化部にはエレクトロスプレーイオン化(ESI),大気圧化学イオン化(APCI)などが有り,HPLCとのインターフェイスおよびイオン源の 役割をします。 ここで生じたイオンは,脱溶媒後オクタポールなどにより収束され,四重極に導入されます。 四重極には直流と高周波交流を重ねた電圧を印可し,目的のm/zを持つイオンのみを通過させます。 検出器に到達したイオンの量を信号化してPCに取り込みます。(Ym)


補足キーワード:LCMS, LC/MS

LC-MSのシステム構成例(四重極型LC-MS)
図2.LC-MSのシステム構成例

I N F O R M A T I O N
講習会情報 :LC,LCMS講習会(高速液体クロマトグラフィー,液体クロマトグラフ質量分析法)のご紹介