逆相クロマトグラフィーのはなし(話)

分析基礎

LCtalk 1号 INTRODUCTORY

●逆相クロマトグラフィーの話

 HPLCの分離モードの中で最も良く用いられているモードとして逆相クロマトグラフィーが挙げられます。対象となり得る化合物の多様さの点では,他のモードを圧倒していると言って良いでしょう。逆相クロマトグラフィーでは,溶質がカラムに保持される現象の原因のうち支配的なものが固定相と溶質の間に働く疎水性相互作用であるということになります。逆相クロマトグラフィー用カラムの充塡剤としては,シリカゲルを担体としてアルキル基などを化学結合させたものと樹脂を基本とするものの2種類ありますが,前者の方が理論段数が高いので特殊な場合を除いては前者を使用します。樹脂を用いなければならない場合というのは,分離のため移動相pHをシリカゲルの使用範囲から外れたところに設定する必要がある場合,あるいはシリカゲル表面に残っている未反応のシラノール基が分離に悪影響を及ぼし,それを移動相の内容を変えることによっては解決できない場合,などが考えられますが,これらは比較的珍しいケースと言えます。シリカゲルに化学結合させるアルキル基として用いられるものとしてはオクタデシル基,オクチル基,トリメチル基などがあります(図1)。アルキル基が長くなるほど保持力は強くなります。カラムの選択は,目的化合物の逆相的な保持の強さに従いおこないます。移動相条件として最も溶出力の強い条件(有機移動相100 %)でも適当な時間以内に溶出しない場合は,そのカラムより保持力の弱いカラムを用いることになります。また,もっとも溶出力の弱い条件(水系移動相100 %)でも適当な時間まで保持しない場合は,より保持の強いカラムを用いることになります。

図1. 化学結合形充塡剤

 カラム選択をおこなった後移動相の内容を決めます。基本は水あるいは緩衝液と有機溶媒の混合溶媒になりますが,分離に影響を与える因子のうち大きなものは

(1)有機溶媒の種類

(2) 有機溶媒の割合

(3) 緩衝液のpH

の3つになります。(1)については,通常使用されているのはアセトニトリルまたはメタノールです。分析上最も望ましいのはHPLCグレードのアセトニトリルであり,紫外吸収が少ないので低ノイズ分析ができる,比較的低圧で分析がおこなえるのでカラム寿命が長くなるという利点があります。ただし例外として,分離の選択性の点からメタノールを選ぶことがあります。つまり,メタノールならピークAとBが分離するがアセトニトリルでは分離しない,あるいはAとBはどちらの溶媒でも容易に分離するが,AとBの分離係数(α)がアセトニトリルでは大きくなり,メタノールの方が分析が短時間に終了するといったような場合です。

 (2)の有機溶媒の割合は,必要な分離が達成されていて,最も溶出が早くなる割合が最適条件になります。(有機溶媒の割合を増やせば溶出は早くなります。また、減らせば遅くなりますが分離は良くなります)中性物質だけが分析対象の場合,保持時間は移動相pHの影響を受けないので,分析は通常水/有機溶媒系でおこないます。その場合,条件設定は(1),(2)だけになります。酸性あるいは塩基性物質に対しては,さらに(3)の条件設定をおこなう必要があります。例えば,安息香酸を例にとると溶液中では図2のような平衡状態で存在しています。溶液のpHを下げれば,この平衡は右にかたより,電荷を持たない状態の割合が多くなります。逆に上げれば左の解離した状態が多くなります。逆相的に保持されやすいのは電荷をもたない状態ですので,この場合pHを下げれば保持が強くなり,pHを上げれば早く溶出します。アミン類など塩基性物質の場合には,逆に上げれば保持が強くなります。このpH依存性に着目し,保持を強くするため,解離が抑制されるようなpHに設定し分析をおこなった場合これをイオン抑制法と呼んでいます。


図2. 安息香酸

 このように酸,塩基は移動相のpHという因子の影響を受けますので,分析の再現性を得るためには水ではなく緩衝液を使用する必要があります。また分離調節という点から見れば,酸,塩基は移動相のpHという因子を変えることにより,他の物質からの選択的な分離を達成することができるわけです。

 さて,緩衝液は通常弱酸あるいは弱塩基の塩を水に溶解させて調製します。よく使用するものには,りん酸塩緩衝液,酢酸塩緩衝液,ほう酸塩緩衝液,くえん酸塩緩衝液,アンモニウム塩緩衝液などがありますが,緩衝液は用いた弱酸のpKa(弱塩基の場合は共役酸のpKa)と同じpHのところで一番強い緩衝能を示すのでpKaを基準に選択をおこないます。例えば,目的とする緩衝液pHが4.8であったとします。酢酸のpKaは4.7と非常に近く,この場合は酢酸塩緩衝液を使うのが望ましいと考えられます。ただし,紫外吸光光度検出器を用い210 nm付近の短波長で測定をおこなう時には,酢酸およびくえん酸はカルボキシ基の吸収によりバックグラウンドが上がり測定上望ましくありません。(3)の条件設定に関しては,化合物の性質に関する情報を得て,上述したような点に注意して,できるだけ短時間に他の物質との分離が達成できるようなpHに設定することになります。

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