■ 概論

 省溶媒化のひとつとして,検出器の出口から出てくる溶出液の一部を移動相ボトルに戻す「溶媒リサイクル」という方法があります。 吸光光度検出器SPD-20A(V)やSPD-10A(V)vpなど,あるいは一体型LC-2010シリーズのオプションとして用意している「リサイクルバルブキット」を用いると,検出器セルから排出された移動相を移動相ボトルに回収できます。

SPD-20A(V)用溶媒リサイクルバルブキット

■ 原理

 溶媒リサイクルバルブキットでは,吸光度レベルのしきい値を設定して,吸光度がしきい値以下の時だけ回収します (LC-2010の場合は正側に現れたピークのみに機能し,SPD-20A(V)やSPD-10A(V)vpは正と負の両側に現れたピークに対して機能します)。ピーク数が少ないほど移動相ボトルへのリサイクル量が多くなり、溶媒消費量を削減できます。

■ 注意点

 長期間にわたって移動相を利用し続けることなく,定期的に作り直すことを心がければ,溶媒リサイクルを成功させることができます。 なぜならば,長期的に再利用を続けた場合,移動相溶媒の蒸発によって移動相組成比が変わってしまい,その結果として分離パターンに変化が生じる恐れがあるためです。 また,試料中の夾雑物,例えば設定波長では検出されなかった成分(右図参照)も移動相ボトルに回収されてしまうため,長期にわたってリサイクルを実施すると,移動相は次第に汚染されます。 このように,長期間のリサイクルは,ピークの分離に対して影響を及ぼしたり,ベースラインノイズが増大したり,カラムへのダメージが生じたりする恐れがありますが,対象試料の特性や用意する移動相の量によるものの,短期的な再利用においては,無視することができます。 なお,移動相の汚染を考えた場合,溶媒リサイクルは,分析対象成分や夾雑成分が多い試料よりも特定成分しか含まれない試料に適しているといえます。


 溶媒リサイクルに起因するトラブルを抑制する方法のひとつとして,検出波長とは異なる他の波長で同時モニターを行えば,夾雑ピークによる移動相の汚染を低減することができます。 二波長同時測定 * が可能なSPD-20A(V)やSPD-10A(V)vp,LC-2010シリーズなら,容易に夾雑物の確認ができます。また,試料注入量を少なくすることでも移動相の汚染を抑制できます。


* 二波長同時測定の場合,Ch1で設定した波長のクロマトグラムを元に,しきい値に従ってリサイクルします。 Ch1にデータ採取の検出波長より短い波長(210~220nm)を設定して,夾雑物のリサイクルを防ぐことができます。 リサイクル中は,検出器本体のSVランプが点灯します。


 一方,移動相の汚染状態を確認する方法のひとつとして,移動相と同じ溶媒を試料として注入してみます。 すると,目的成分の溶出位置付近で負のピークが確認される場合があります。 移動相内における目的成分の含有量は,リサイクルを繰り返すに従って微量ながら増え続け,これに起因する吸光度の増加が無視できない大きさに上昇すると,この現象が発生します。 このような現象がみられた場合は,移動相を新しいものに交換してください。

■ 制約事項

 なお,上図の流路からわかるように,溶媒リサイクルはイソクラティック分析に対して有効であり,グラジエント分析には利用できません。 同様の理由で,グラジエントシステムを用いたイソクラティック分析(グラジエントシステムで移動相を一定組成で混合)でも利用できません。

HPLC移動相としてよく使われるアセトニトリルが入手困難,流通不足,在庫不足と言われています。溶媒消費量削減するため対策ページです。