紙に塗った水性インクに水滴を落とすと色が滲み、一つの色のインクは複数の色で構成されていることがわかります(図1)。インクは複数の色を混合して製造されており、混合されている色の成分のうち、水の溶けやすさの違いが色の滲みの原因です。

図1 インクのにじみ実験​

 

紙に落とした水滴は、落下点を中心として紙に広がっていきます(図1c)。この時、水に溶けやすい成分は浸透する水とともに紙面上に広がっていき、水に溶けにくい成分はインクを塗った点にとどまる、もしくはわずかに広がります。これがインクの滲みの原理です。図1の例では、浅葱色(薄い青緑)のインクに水滴をを落とすと、黄色、緑、水色、青・・に分かれて広がっていく様子を示しています。​ ​

 

「クロマトグラフィー」は、1900年代初頭にロシアの植物学者Tswettが考え出した手法です。Tswettは葉緑素が複数の色素によって構成されていることを確認するため、下の図(図2)のような実験をしました。​

図2 葉緑素の実験

図2 葉緑素の実験

 

炭酸カルシウムを充填したオープンカラム*1に葉緑素を注入し、石油エーテルを流すと、葉緑素がクロロフィル(緑)やカロテノイド(黄や赤)といった複数の色素のバンドに分かれることを確認しました。Tswettは、この手法を「色(Chromato)を記録する方法(graphy)」と名付けました。この手法を工業的に利用したものが分析化学に利用されている「クロマトグラフィー」です。​ ​

*1オープンカラム:重力により移動相を押し出す方式