アドバンストフローテクノロジーシリーズ(Advanced Flow Technology) - アプリケーション
キャピラリ分析システム
ハートカットシステムによる分析例
バイオエタノールの分析例
バイオエタノール混合ガソリン(バイオガソリン)は,「揮発油等の品質の確保等に関する法律(品確法)」により,アルコール混合許容値が設定されています。 メタノールは,機械部品を腐食・劣化させ,燃料漏れなどのトラブルを招く可能性がある為です。 バイオエタノールの品質規格としては,ASTM D4806があり,その中で,エタノールとメタノールの濃度については,GCで定量することが定められています。(ASTM D5501) しかし,ASTM D5501では100mや150mの長いカラムを使用するため,分析時間が長くなってしまいます。
ここでは,ハートカットシステムによるバイオエタノールの高速分析例をご紹介します。
ASTM D5501による分析

Method1
カラム&カラム温度 :
Rtx-1 (150 m 0.25 mmI.D. 1.0 μm)
60℃ (15 min) - 30 ℃/min - 250 ℃(23 min)
注入口 : 300 ℃
注入量 : 0.5 μL
スプリット比 : 1:200
キャリアガス : He 24 cm/sec
FID : 300 ℃

150 m カラムでは,40分以上かかっています。
Method2
カラム&カラム温度 :
Rtx-1 (100 m 0.25 mmI.D. 0.5 μm)
15℃ (12 min) - 30 ℃/min - 250 ℃(19 min)
注入口 : 300 ℃
注入量 : 0.5 μL
スプリット比 : 1:200
キャリアガス : He 24 cm/sec
FID : 300 ℃


注入口温度:300 ℃
圧力:215.0 kPa
キャリアガス:He (constant pressure)
注入モード:Split
スプリット比:1:200
カラム温度:35 ℃(2.5 min) - 20 ℃/min - 230 ℃
注入量:0.5 μL
1stカラム:Rtx-1 (30 m 0.25 mm I.D. 0.25 μm)
2ndカラム:Rtx-Wax (30 m 0.32 mm I.D. 0.5 μm)
1st 検出器:FID
1st検出器温度:300 ℃
2nd検出器:FID
2nd検出器温度:300 ℃
APC圧力:120 kPa
スイッチング時間:1.42~1.96 min
ハートカットを使用することにより,1stカラム(Rtx-1)でエタノール(EtOH)とメタノール(MeOH)を他の炭化水素から荒く分離した後に,2ndカラム(Rtx-Wax)にて精密に分離できました。
2ndカラムでの分析時間は,ASTM D5501と比較して大幅に短くなっています。 また,定量性もASTM D5501とほぼ同程度です。
ハートカットシステムにより,バイオエタノールのアルコール濃度を迅速,正確に定量できることがわかります。
バックフラッシュシステムによる分析例
キャベツ中の塩素系農薬分析例
農作物に残留する農薬は人体に害をもたらす可能性があるため,各国の規制により対象作物,成分により残留基準値が定められています。食品分析では,試料ブランクに多くの成分を含んでおり,分析時間が長くなる傾向がありますが,バックフラッシュを行うことで,分析時間を大幅に短縮できる場合があります。
ここでは,バックフラッシュ分析により分析時間を1/2以下に短縮できた例をご紹介します。
キャベツ抽出液及びキャベツ抽出液に塩素系農薬8成分標準試料を添加した試料のクロマトグラム
(GC-ECDによる分析)
(α-BHC,β-BHC,γ-BHC,δ-BHC,P.P‘-DDE,O,P’-DDT,P,P’-DDD,P,P’-DDT,各 0.1μg/mL)
通常分析では,キャベツに含まれる高沸点成分の追い出しの為,32分かかっています。例えば,測定対象成分がBHCの場合,BHC溶出後の12分にバックフラッシュを設定します。バックフラッシュ分析では,15分で分析が終了し,分析時間を半分以下に短縮することができました。
その後,ブランクランを行いました。カラムにブランク成分が残留していないことがわかります。

下段のクロマトグラムは,バックフラッシュ分析を5回繰り返した結果です。再現性良く分析できています。この結果からも,キャベツのブランク成分がカラムに残留していないことが判ります。

このように,バックフラッシュ分析では分析時間を短縮できる上,カラムにブランク成分が残留しないので,カラムの劣化やリテンションタイムのずれも防止できます。
検出器分岐システムによる分析例
香水のFIDとMS-TIC同時分析例
香料など天然物由来の試料の分析では,定量応答範囲が広いFID(水素炎イオン化検出器)による分析と未知成分の定性情報を得ることのできるMS(質量分析検出器)の併用が有効です。ここでは,検出器分岐システムによる香水のFIDとMSの同時分析例(スプリット分析)をご紹介します。

Fig.1
通常分析では,GC-FIDとGCMSを準備し,分析クロマトグラムを比較する必要がありますが,検出器分析システムを用いれば,Fig.1のように,一回の試料分析で同一パターンのトータルイオンクロマトグラム(TIC)とFIDのクロマトグラムを得ることができます。また,適切な内径,長さの抵抗管を用いる事により,ピークA,B,Cのように各ピークの保持時間の差を1秒以内に抑えることが可能です。
本分析例では,FIDによりピークAの濃度は0.13%,TICのピークAのマススペクトルから,ピークAは,D-Limoneneと定性できました。(Fig.2)


Fig.2
1回の分析にて,多くの情報が得られる検出器分岐システムでは,分析装置やカラムのコストや分析時間を節約する事ができます。
グレープフルーツオイルのFID,FTD,FPD同時分析例
検出器分析システムでGCの選択性検出器を複数組み合わせることにより,同定精度の向上,同時定量が可能です。ここでは,検出器分岐システムによるグレープフルーツオイルのFID(水素炎イオン化検出器),FTD(フレームサーミオニック検出器),FPD(炎光光度検出器)の同時分析例(スプリット分析)をご紹介します。

FTDでは,窒素系化合物及びリン系化合物,FPDでは,硫黄系化合物及びリン系化合物を選択的に検出します。ピークBの成分は,FTD,FPDの両方で検出されておりリン系化合物であると推定されます。また,ピークA,Cは,FPDのみで検出されていますので硫黄系化合物であると推定されます。
本分析例のように,GC選択性検出器を複数組み合わせて使用する事により,微量成分の同時定量が可能となります。
検出器切替システムによる分析例
農薬の分析例
GCでの残留農薬分析には通常高感度な選択性検出器が用いられます。 選択性検出器は農作物由来の夾雑成分に対し効果が高い反面,全ての農薬成分を検出するためには複数の検出器による分析が必要になります。 検出器切替システムを用いれば,選択性の異なる複数の検出器を組み合わせて切替分析を行うことができます。 それぞれの検出器単独で分析した場合と検出器に導入される量は同じですので,感度が低下することなく1回の分析で複数検出器の情報を精度よく得ることができます。
ここでは,FPD(炎光光度検出器)とECD(エレクトロンキャプチャ検出器)の切替による,農薬試料の同時分析例をご紹介します。
検出器切替による分析(FPD-ECD)

FPDで,有機リン系の農薬を選択的に検出し,ECDで塩素系の農薬を高感度に検出することができました。
多くの成分が対象となる残留農薬分析でも,一度の分析で効率的に精度よく測定できることがわかります。