土づくりに科学技術を~土壌肥沃度指標(SOFIX)

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    TOC-Lシリーズ(燃焼触媒酸化方式)

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久保 幹(くぼ もとき) 教授

久保 幹(くぼ もとき) 教授
 

*お客様のご所属・役職は掲載当時のものです。

立命館大学 生命科学部生物工学科

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インタビュー

農業生産で最も重要な要素の一つとされている「土づくり」ですが,それは農家の長年の経験や勘に委ねられてきました。良い土壌とは,土壌の化学的性質(肥料成分,緩衝作用等),物理的性質(保水力,通気性等),生物的性質(微生物による有機物の分解,耐病害虫等)の三つの要素が整った状態であることです。三つの要素のうち,従来の技術では困難であった,生物的性質を分析し「土づくり」を見える化する手法である『土壌肥沃度診断:SOFIX(Soil Fertile Index)』を開発し,普及活動をされている立命館大学生命科学部 生物工学科の久保幹先生にお話を伺いました。

 

研究内容についてお聞かせください。
 

アメリカ留学中に,微生物などを利用した土壌や地下水の汚染を修復する技術であるバイオレメディエーションに関わったことが,土壌の改良について研究するきっかけとなりました。石油分解菌といわれる微生物を用いて土壌の石油を分解していた際,「微生物が増える環境」と「微生物が増えない環境」があることがわかり,その環境の違いが,土壌の肥沃度だったのです。従来の土壌分析では,肥料の成分などの化学的性質を調べることが中心で,微生物量などの生物的性質については注目されていませんでした。しかし,生物工学で微生物を研究することで,生物的性質を調べることが重要だと考えたことが,SOFIX研究開発の始まりです。

SOFIXは,有機物と微生物を調和させ,健康な土から健康な農産物や植物などを育てる技術です。
土中の微生物の栄養源となる炭素の量は島津製作所のTOC+SSM(固体試料燃焼装置)システムで測定し,他の機器や手分析で測定した菌数や各元素の量を独自のアルゴリズムを用いて炭素量と比較することで植物の生育する上で不足している成分を,土の健康診断表として「見える化」しています。
この分析結果に基づき,有機肥料を使う計画をたてます。さらに,堆肥や有機資材についても分析を行い見える化を行い,データに基づいた「土づくり」の科学的な処方箋を出しています。人間に例えると,健康診断の結果から悪いところを治すために薬を処方してもらい元気になる,これと同じ流れを土壌で実施しています。

具体的な事例を教えてください。
 

畑の土壌改良から始まったSOFIXですが,現在は水田,樹園地についても展開しています。島津製作所 本社・三条工場「島津の森」でも,一部の場所で樹木の生長が芳しくないエリアがあり,SOFIX技術を活用した,微生物の好む「理想の土」に近づけるための土壌改良を行い,その効果が目に見えて出てきています。処方前の土壌の分析値から,土壌中C/N比(全炭素量/全窒素量)を適正な範囲内にすることを目標に,牛糞堆肥をベースに窒素成分が多い鶏糞堆肥と大豆かす,リン成分が多い米ぬかと骨粉などの施肥を2回実施しました。

 

SOFIX分析結果 ヤマモミジ(島津の森)

測定項目 SOFIX推奨値 処方前2019/7/24 処方後2020/6/16
総細菌数(億個/g) ≧6.0 3.1 10.1
全炭素 (mg/kg) ≧25,000 10,440 24,560
全窒素 (mg/kg) ≧1,500 233 1,067
全リン (mg/kg) ≧1,100 483 1,156
全カリウム (mg/kg) 2,500 ~10,000 7,457 5,664
炭素率 C/N比 15~30 45 23

処方前後では,測定値の肥沃度を示す各項目と,下記の写真の通り,芽吹き,葉の色や大きさ・量の変化などについて,処方前と比べて,目視でも明らかに改善されていることが確認できました。

<ヤマモミジ>

当社装置を選んでいただいたポイントは何ですか?
 
 

従来,炭素量を測るためには,土を燃焼させて,燃焼前後の重量を測定しその変化量から炭素量を計算していました。サンプル数が多くなるとこの方法では時間が掛かるし人手がいるので,データベース作成などの場合膨大な時間を有します。島津製作所のTOC(全有機体炭素計:TOC-V CPH)と固体試料燃焼装置(SSM-5000A)を導入後は,土中の全炭素量を簡易・迅速に測定することができるようになりました。サンプルの土をセットするだけで,自動で全炭素量を打ち出してくれるのが最大のメリットです。結果として800種類の土のデータベースを完備し,測定対象と比較して診断することが短期間で可能となりました。

 
今後の課題と当社への期待について教えてください。
 

今後の課題はSOFIXのさらなる普及です。そのために重要となるのが,分析の効率化です。分析の検体数増加のために,TOC+SSM(固体試料燃焼装置)システムのオートサンプラ―化をぜひお願いしたいです。

当社製品は,SOFIX分析用途にTOC+SSMシステム2台と元素分析計(AA),それに加え土壌中の残留農薬分析用にHPLC,土壌中の油分測定用にGCをご活用いただいています。さらなる貢献に向けて,今後も製品開発を進めてまいります。本日は,大変貴重なお話をありがとうございました。
 

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