東京大学大学院理学系研究科

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西増 弘志 准教授

西増 弘志 准教授

*お客様のご所属・役職は掲載当時のものです。

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ユーザーレビュー

 

先生のご研究内容について教えてください!
西増 弘志 准教授

最近,生命の設計図であるゲノム情報を書き換える「ゲノム編集」技術が注目されています。ゲノム編集には細菌に由来するRNA依存性DNA切断酵素Cas9が利用されています。わたしたちは立体構造解析や生化学的解析により,Cas9がガイドRNAと協働して標的DNAを切断する分子機構の解明を目指して研究しています。さらに,分子構造をもとにCas9タンパク質を改変することにより,新たなゲノム編集ツールの開発にも挑戦しています。

参考URL:https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2018/6021/

参考URL:https://first.lifesciencedb.jp/archives/18665

 

ご研究の中で,MultiNAはどのようにご活用いただいていますか?
西増 弘志 准教授

Cas9の機能解析や機能改変には,Cas9のDNA切断活性を正確に測定することが重要です。培養細胞におけるCas9のゲノム編集効率は,DNA切断効率に加えて,Cas9の導入効率や標的サイト周辺のクロマチン状態,DNA二本鎖切断の修復効率など様々な影響を受けます。したがって,Cas9のDNA切断活性を正確に評価するためには,高純度に精製したCas9タンパク質,ガイドRNA,標的DNAを試験管内で混合し,標的DNAの切断反応のタイムコースを測定する必要があります。わたしたちは,DNA切断実験におけるDNA(基質と切断産物)の定量にMultiNAを利用しています。ヘテロ二本鎖移動度分析によるゲノム編集効率の評価にMultiNAを利用されているユーザーの方が多いと思いますので,通常とは異なる使い方だと思います。

関連手順:https://science.sciencemag.org/content/361/6408/1259.long

 

MultiNAについて,レビューをお願いします!
西増 弘志 准教授

MultiNAを導入する前は,切断反応後のDNAをアガロースゲル電気泳動を用いて解析していました。具体的には,Cas9タンパク質,ガイドRNA,標的DNAを0.5,1,2,5分間反応させた後,1サンプル(10 µL)ずつウェルにロードし,電気泳動,ゲルを染色・撮影し,基質DNA(3 kb)と切断産物(2 kbと1 kb)に対応するバンドを定量することにより,DNA切断活性を算出します。この方法ですと,DNA切断反応を正確に行ったとしても,それ以降の複数のステップにおいて誤差が生じてしまうため,DNA切断活性を正確に決定するのは困難でした。また,一度に電気泳動できるサンプル数は限られているため,迅速な解析は不可能でした。
さらに,ウェルに穴が空いていた,ゲルの染色がよくない,ゲルを落として破損した,などの予期せぬアクシデントがあると,切断実験からやり直さなければなりません。サンプルが多くなると,バンドの定量やデータの管理も容易ではありませんでした。一方,MultiNAは一度に96サンプルに関して,電気泳動から切断産物の定量まで自動で行ってくれるため,DNA切断反応後の解析効率が劇的に向上しました。必要なサンプル量も1/5になりました。SpCas9-NG改変体の論文(Nishimasu et al. Science 2018)には,約450ポイント(n = 3)の切断実験データが掲載されていますが,アガロースゲル電気泳動を用いて同様の精度のデータを得るのは,現実的に不可能でした。「MultiNAがなければ,SpCas9-NG改変体の開発は不可能だった」と感じています。

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