9-Aminoacridine(9AA)の蒸着後再結晶化法を用いた低分子代謝物のMSイメージング

現在に至るまで技術革新を続け、創薬研究や代謝物研究の分野をはじめとする多くの分野において活用されています。現在も感度や空間分解能、再現性などの向上を目的とした技術改良が行われています。
イオン化に用いるマトリックスもさまざまなものが開発されてきましたが、これらの中から検出目的化合物に適したマトリックスを選択することは重要です。
また、マトリックスの選択に加え、その塗布方法も分析結果に大きく影響するため、検出目的化合物に適した方法がいくつか検討されています。大別するとスプレー法、蒸着法の2つの方法がありますが、どちらの塗布方法も一長一短があり、現状では両手法ともによく用いられています。弊社ではマトリックスの膜厚を制御できるマトリックス蒸着装置iMLayerを開発し、塗布方法の検討を行ってきました。
従来再結晶化が難しいと言われていた9AA についての蒸着後再結晶化の方法を開発しました。一例としてマウス肝臓における低分子代謝物のMSイメージングの結果をご紹介いたします。

9AAの蒸着後再結晶化を実施したマウス肝臓サンプルについて、イメージング質量顕微鏡 iMScopeTRIOを用いて、MSイメージング分析を実施しました。蒸着法でマトリックス塗布したサンプルと蒸着後再結晶化したサンプルの分析結果を比較するため、分析エリアの積算平均スペクトルを比較しました(Fig.1,2)。

蒸着法の場合のマススペクトル

Fig.1 蒸着法の場合のマススペクトル

 
蒸着後再結晶化法の場合のマススペクトル

Fig.2 蒸着後再結晶化法の場合のマススペクトル

また、それぞれの方法で分析したいくつかの低分子代謝物についてのMSイメージにおいても、蒸着後再結晶化を実施することで、より鮮明なMSイメージを描くことが可能となりました。

 
MS イメージ(蒸着法と蒸着後再結晶化法の比較)
 

     蒸着法     

顕微鏡像

顕微鏡像

Edy

UDP

ADP

ADP

ATP

ATP

Taurocholate

Taurocholate

UDP-GlcNAc

UDP-GlcNAc

   蒸着後再結晶化法   

顕微鏡像

顕微鏡像

UDP

UDP

ADP

ADP

ATP

ATP

Taurocholate

Taurocholate

UDP-GlcNAc

UDP-GlcNAc

関連アプリケーション

 

イメージング質量顕微鏡iMScope TRIO

  • レーザーを5μm以下に集光できるため、微小な領域の質量分析や高解像度質量分析イメージを得ることができます。また、高性能試料位置決め機構により、光学顕微鏡像で観察した同じ位置を正確に質量分析することが可能です。
  • 大気圧イオン化法を採用しているため、試料を真空下におく必要がありません。Wetなサンプルや揮発性の高いサンプルの分析が可能になります。
  • 高分解能/高精度なMS機能が詳細、正確な構造推定を強力に支援します。
  • 対物レンズ40倍の高性能生物顕微鏡を搭載し、高い解像度で試料観察ができます。