アミオダロンの構造式

Fig.1 アミオダロンの構造式

創薬研究において、候補化合物の体内動態解析は、薬効薬理メカニズムの解明のみならず、毒性評価の観点からも重要な情報をもたらします。一般的には、オートラジオグラフィ(Autoradiography: ARG)や蛍光色素を利用した方法が利用されていますが、ARGでは費用が高額になることや、蛍光剤をラベル化剤として利用することによる薬物動態への影響が危惧されていました。そこで近年、ノンラベルで候補化合物の局在情報を検出できる手法として、MSイメージングの分析技術が注目されています。本手法は、ラベルフリーで各種物質の局在解析が行えることに加え、薬物の未変化体と代謝物の解析を同一切片から同時に解析できることから、創薬研究におけるブレークスルーをもたらすことが期待されています。

ここでは、ラットにアミオダロン(Fig. 1)を投与し、肺組織に認められた病理所見とアミオダロンの局在を比較するため、イメージング質量顕微鏡 iMScope TRIOを用いたMSイメージング分析の活用例をご紹介します。

イメージング質量顕微鏡iMScope TRIO を用いて、空間分解能5 μm の高解像度イメージングを行って得られた組織切片上のマススペクトルと標準品のマススペクトルを比較すると、共通してm/z 646.0 のシグナルが検出されました(Fig.2,3)。このm/z 646.0 のマスイメージを描いたところ、細胞の泡沫マクロファージ浸潤が認められる部位でアミオダロンが集積していることが確認できました(Fig.4~6)。

組織切片上のマススペクトル

Fig.2 組織切片上のマススペクトル

 
組織切片および標準品のマススペクトル

Fig.3 組織切片および標準品のマススペクトル

 
アミオダロン投与肺切片(HE 染色)

Fig.4 アミオダロン投与肺切片(HE染色)

アミオダロン投与肺切片

Fig.5 アミオダロン投与肺切片
(MS イメージング分析用未染色)

MS イメージ(アミオダロン未変体)

Fig.6 MS イメージ(アミオダロン未変体)

関連アプリケーション

 

イメージング質量顕微鏡iMScope TRIO

  • レーザーを5μm以下に集光できるため、微小な領域の質量分析や高解像度質量分析イメージを得ることができます。また、高性能試料位置決め機構により、光学顕微鏡像で観察した同じ位置を正確に質量分析することが可能です。
  • 大気圧イオン化法を採用しているため、試料を真空下におく必要がありません。Wetなサンプルや揮発性の高いサンプルの分析が可能になります。
  • 高分解能/高精度なMS機能が詳細、正確な構造推定を強力に支援します。
  • 対物レンズ40倍の高性能生物顕微鏡を搭載し、高い解像度で試料観察ができます。