創薬研究において,候補化合物の体内動態解析は,薬効薬理メカニズムの解明のみならず,毒性評価の観点からも重要な情報をもたらします。一般的には,オートラジオグラフィ(Autoradiography: ARG)や蛍光色素を利用した方法が利用されていますが,ARG では費用が高額になることや,蛍光剤をラベル化剤として利用することによる薬物動態への影響が危惧されていました。そこで近年,ノンラベルで候補化合物の局在情報を検出できる手法として,イメージング質量分析法が注目されています。本手法は,ラベルフリーで各種物質の局在解析が行えることに加え,薬物の未変化体と代謝物の解析を同一切片から解析できることから,創薬研究におけるブレークスルーをもたらすことが期待されています。
ここでは,イメージング質量顕微鏡iMScope TRIO を用いて,クロロキンを投与した有色ラットの網膜を測定した例をご紹介します。

クロロキンの構造式
 
Fig.1 クロロキンの構造式

抗マラリア剤のひとつであるクロロキンを投与したラットの網膜を測定しました。クロロキンの構造式をFig. 1 に示します。

イメージング質量顕微鏡 iMScope TRIOを用いて,高解像度イメージングを行った結果,約10 μmの厚みを持つ網膜色素上皮周辺でのクロロキンの分布局在を可視化しました(Fig. 2~びFig. 4)。
iMScope TRIOによるMS/MSモードでの測定により,感度が向上し,10 μmの高空間解像度でのMS/MSイメージング画像の取得が可能になりました。

 

 

組織切片上のMS/MSスペクトル

Fig2. 組織切片上のMS/MSスペクトル

 
光学画像

Fig.3 光学画像

MS/MSイメージ

Fig.4 MS/MSイメージ
(m/z 320.190>247.096)

関連アプリケーション

 

イメージング質量顕微鏡iMScope TRIO

  • レーザーを5μm以下に集光できるため、微小な領域の質量分析や高解像度質量分析イメージを得ることができます。また、高性能試料位置決め機構により、光学顕微鏡像で観察した同じ位置を正確に質量分析することが可能です。
  • 大気圧イオン化法を採用しているため、試料を真空下におく必要がありません。Wetなサンプルや揮発性の高いサンプルの分析が可能になります。
  • 高分解能/高精度なMS機能が詳細、正確な構造推定を強力に支援します。
  • 対物レンズ40倍の高性能生物顕微鏡を搭載し、高い解像度で試料観察ができます。