土壌中のTPHの分析のご紹介

土壌中のTPHの分析のご紹介

油による土壌汚染は,地下水への浸透のほか,油臭や油膜といった生活環境保全上の支障が生じることから社会問題として取り上げられています。環境省は平成18年6月に「油汚染対策ガイドライン」,「鉱油類を含む土壌に起因する油臭・油膜問題への土地所有者等による対応の考え方」を発表しました。このガイドラインの第二編 技術的資料 第二部 専門編 第1章 状況把握調査1)の中で「GC-FID法によるTPH試験法」(以下ガイドライン法と表記)が記載されています。
内径0.53 mmのワイドボアカラムを用いたオンカラム法が2条件(カラム温度-30 ℃からの昇温分析と35 ℃からの昇温分析)と,内径0.32 mmのキャピラリカラムを用いたスプリットレス法(カラム温度35 ℃からの昇温分析)が1条件,あわせて3種類の分析条件が記載されています。いずれも適用範囲,測定対象化合物は同じですが,使用装置構成,温度条件,カラムが異なります。
本アプリケーションニュースでは,0.53 mmのワイドボアカラムを用いたオンカラム法における,35 ℃からの昇温分析法を用いた土壌中のTPH分析についてご紹介いたします。

■ TPH定量範囲の決定 Elution Range of TPH

ガイドライン法ではTPHの定量範囲をn-C6H14およびn-C44H90を含む標準溶液で決定します。
定量範囲は,「n-C6H14のピーク立ち上がりの0.1分前(開始保持時間 RT-C6)」から「n-C44H90のピーク溶出終了の0.1分後(終了保持時間 RT-C44)」までです。
Fig.1,2に定量範囲決定用のパラフィン混合試料のクロマトグラムを示しました。

Fig.1 n-C6H14~n-C8H18標準溶液のクロマトグラム

Fig.1
n-C6H14~n-C8H18標準溶液のクロマトグラム
Chromatogram of standard solution (n-C6H14~n-C8H18)

Fig.2 n-C12H26~n-C44H90標準溶液のクロマトグラム

Fig.2
n-C12H26~n-C44H90標準溶液のクロマトグラム
Chromatogram of standard solution (n-C12H26~n-C44H90)

■ TPH定量のための検量線 Calibration of TPH

ガイドライン法ではTPHの定量のための検量線用標準試料はASTM標準軽油とされています。ASTM標準軽油をCS2で希釈調製しました。標準溶液および土壌抽出溶液ともにGCに1µL注入しました。各クロマトグラムはCS2(溶媒)のみを測定したクロマトグラムを差し引きするようになっています。検量線は試料濃度に応じて高濃度用(250~10000 mg/L),もしくは低濃度用(50~1000 mg/L)を作成し定量に用います。Fig.3に1000 mg/L標準軽油のクロマトグラムを示しました。ASTM標準軽油250~10000 mg/Lの検量線をFig.4に示しました。
ガイドライン法では,土壌抽出液中のTPHの定量は,先の標準軽油の検量線を用いて行います。土壌中のTPH抽出法の流れをFig.5に示しました。模擬汚染土壌試料(軽油を添加した土壌)抽出溶液AのクロマトグラムをFig.6に示しました。
なお,定量値は炭素範囲n-C6H14~n-C44H90の結果であることを明記することとなっています。

Fig.3 ASTM標準軽油(1000μg/mL)のクロマトグラム

Fig.3
ASTM標準軽油(1000µg/mL)のクロマトグラム
Chromatogram of standard light oil (1000 µg/mL)

Fig.4 ASTM標準軽油の検量線(250~10000μg/mL)

Fig.4
ASTM標準軽油の検量線(250~10000µg/mL)
Calibration curve of ASTM standard light oil

Fig.5 土壌からのTPH抽出操作

Fig.5
土壌からのTPH抽出操作
Extraction method of TPH from soil

Fig.6
模擬汚染土抽出液のクロマトグラム
(軽油を約5000 µg/gになるよう添加)
Chromatogram of the extract of soil spiked with light oil

また,ガイドライン法のTPHの定量法の注釈には「ガソリンの炭素範囲」,「軽油の炭素範囲」,「残油の炭素範囲」の濃度計算方法の解説が記載されています。基準のパラフィン溶出時間をもとに,クロマトグラムの面積値を分割して面積計算をすると記されています。
ガソリンの炭素範囲,軽油の炭素範囲,残油の炭素範囲に分けられ,それぞれの溶出範囲は

(1) ガソリンの炭素範囲(C6~C12):n-C6H14のピークの立ち上がり0.1分前からC12H26の保持時間まで
(2) 軽油の炭素範囲(C12~C28):n-C12H26の保持時間からC28H58の保持時間まで
(3) 残油の炭素範囲(C28~C44)はn-C28H58の保持時間からn- C44H90ピークの溶出終了後0.1分まで

とされており,各炭素範囲のピーク総面積を求めて算出します。
ガイドライン法には「上記の方法で各炭素範囲の面積値の合算を求める」ことまでは記載されていますが,その後の計算方法まで言及されていません。
各炭素範囲,およびTPHの定量方法の一例を以下に示します。

  1. ASTM標準軽油を用いてRT-C6~RT-C44画分の総面積値をもとに検量線作成し,感度補正係数(F:1面積あたりの標準軽油濃度)を算出
  2. そのFを抽出試料のガソリン画分(C6~C12),軽油画分(C12~C28),残油画分(C28~C44)の面積値に乗じて各範囲の濃度を算出
  3. 各画分の濃度を合算し,TPH量を算出
    詳細な操作,条件は環境省のHP1)をご参照ください。

Table1 分析条件
Analytical Conditions

Model GC-2010AF/AOC (FID), GC-solution
Column UA-TPH 8 m × 0.53 mm I.D. df=0.9 µm (Frontier Lab) or
BPX-1 8 m × 0.53 mmI.D. df=0.9 µm
(SGE, 10 mカラムを8 mにCut)
Det FID
Column Temp. 35 °C (2min) - 10 °C/min - 375 °C
Carrier Gas 5mL(2min) - 2mL/min -19mL
Inj.Temp. 100 °C-10 °C/min-375 °C
Det.Temp. 375 °C
Injection Method Cool on-column, Injection Volume:1 µL

[参考文献]
1)環境省HP http://www.env.go.jp/water/dojo/oil/02-3.pdf

Nexis GC-2030

ガスクロマトグラフ(GC)

高い再現性はもちろん,FPDやFIDなど世界最高レベルの高感度を誇る検出器群により,微量分析に対応し,信頼性の高い高精度な分析を可能にします。

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