異種金属の摩擦攪拌点接合に対する多角的評価
近年,温暖化ガスの排出量削減や資源の有効活用のために,輸送機器の軽量化が重要な課題となっています。軽量かつ強靭な材料は一般に高価なため,高品質かつ低コストな機器の実現には,適材適所で異種材料を使用する材料のマルチマテリアル化が重要です。マルチマテリアル化の推進には,異種材料の接合技術開発に加えて,接合材料の検査・評価手法の検討も欠かせません。今回は,複数の観察・試験装置を用いて異種金属の摩擦攪拌点接合を多角的に評価しました。
内容
■ 試料
- 接合材料:高張力GA鋼板,アルミニウム板
- サイズ:長さ100 mm×幅 30 mm×厚さ1 mm
- 加圧時間:長,短の2種
- 超音波探傷装置による音場変状と精密万能試験機によるせん断強度とに相関が確認されました。
- 電子線マイクロアナライザの断面観察から, 2種類の試料で接合ツール直下の端部近傍におけるき裂の幅に差が見られました。
- 接合ツール直下の端部近傍の接合内部に発生している空隙やき裂などの欠陥がせん断強度に影響を与えたと推測されます。
■ 超音波光探傷装置による欠陥検査で接合欠陥を迅速にスクリーニングチェック
・接合条件によって,欠陥の有無に違いが見られました。

超音波光探傷 イメージ

加圧時間 短 音場画像

加圧時間 長 音場画像
※音場変状…欠陥の存在を示唆する超音波の不連続箇所
■ X線CTシステムによる三次元構造観察で接合部形状を非破壊で観察
・接合部近傍の隙間や金属の観察や接合強度に関係があると言われる板厚の測定が可能です。
断面画像
接合部近傍の板厚・隙間計測
■ 精密万能試験機による引張せん断試験で接合の良否を正確に判定
- 欠陥検査や内部観察した試料の強度を測定できます。
- 接合条件によって,引張せん断強度に差が生じました。
■ 電子線マイクロアナライザによる断面観察・組成分析でせん断強度変化の原因を究明
- 試料断面の微細観察やマッピング分析を実施できます。
- 接合条件によって,き裂の厚みが異なりました。
ここがポイント!
- 非破壊観察と強度試験を組み合わせることで,機械特性と機械特性に影響する要因を同一試料で評価できる。
- 当社独自の超音波光探傷技術は接合状態の検査に有効。
※ inspeXio,SMX,オートグラフ,AGXおよびEPMAは,株式会社島津製作所の日本およびその他の国における商標です。