走査型プローブ顕微鏡(SPM)は微細表面形状観察のほか,位相,磁気力,粘弾性など試料表面の様々な物性情報を得ることができます。ここでは,光照射中の表面電位を計測することで,光触媒の励起状態計測を行った例をご紹介します。半導体光触媒として用いられる白金担持TiO2微粒子をガラス基板上に固定し,走査型プローブ顕微鏡(SPM)により,表面電位と形状を観察しました。

測定条件

使用装置 走査型プローブ顕微鏡SPM-9700,光照射ユニット(上面照射)
雰囲気 大気
走査速度 0.3Hz
画素数 256×256
モード KFM
紫外線照射 オゾンレス水銀キセノンランプ 300~450 nm
表面電位と形状を観察

試料ご提供:東京工業大学理学院 前田和彦准教授

左は大気中でそのまま観察した画像,右は試料に対して上方より紫外光を照射しながら同一場所を観察した画像です。原子間力顕微鏡(AFM)三次元形状像(下図左右)の結果から,紫外光照射によって触媒粒子の形状は変化していないことがわかります。
一方,表面電位像(上図左右)から,触媒粒子の表面電位は紫外光照射によって平均で130mV高くなり,それは可逆的変化でした。これは光によって触媒表面に電荷分離が起こっていることを表していると考えられます。

光照射-走査型プローブ顕微鏡システム SPM-9700

光照射-走査型プローブ顕微鏡システムは,測定対象に光を照射した状態で表面形状観察,物性測定が行えるシステムです。光照射中のin-situ測定が可能なため,光触媒の励起状態計測や太陽電池の発電状態計測など,光を吸収している状態での分析が行えます。本システムは光照射による試料状態変化の追跡,評価に最適な装置です。

光照射ユニット(上面照射)

光照射ユニット
(上面照射)

試料表面に光ファイバーを導き,上方から光を照射

試料下面レーザー照射キット(下面照射)

試料下面レーザー照射キット
(下面照射)

レーザー,高圧水銀ランプ,LEDなどの各種外部光源より照射光を導入