自動車エンジンの燃料噴霧に関する高速度撮影
自動車エンジンの燃料噴霧に関する高速度撮影/HPV-X2
近年,環境対策のために,エンジンの各動作工程の見直しが進められており,その中で高速撮影による可視化は重要な観察手法となっています。例えば,排気ガスに含まれる有害微粒子であるPM2.5は,インジェクタから噴霧されたガソリンがシリンダ壁面へ付着することが原因の一つと考えられています。また,燃費向上に関しては,噴霧時のガソリンの微細化や均一化を行うことが重要です。
今回,高速度ビデオカメラHPV-X2を用いて,インジェクタによる燃料噴霧の様子と,噴霧の壁面への衝突の様子を撮影しましたのでご紹介します。
Table 1 試験装置
高速度ビデオカメラ | HPV-X2 |
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顕微鏡 | 長距離顕微鏡 |
照明 | ストロボ |
Table 2 撮影条件
撮影速度 | 1000万コマ/sec(噴霧の様子) 200万コマ/sec(衝突の様子) |
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Fig.1 撮影の様子
実験には高速度ビデオカメラHPV-X2を用いました。Table 1に使用した装置を示します。今回は実物のエンジンではなく,上側にインジェクタ,下側に平面板を設置したもので撮影を行いました。
Table 2に撮影条件を,Fig.1に撮影の様子を示します。
■ インジェクタによる燃料噴霧の撮影動画
Fig.2 インジェクタによる燃料噴霧の撮影動画
■ 燃料噴霧の撮影画像
Fig.3~6に燃料噴霧の画像を示します。インジェクタによる燃料噴霧の撮影では,ノズル出口近傍,ノズルから1 mm下方,2 mm下方,4 mm下方の様子をそれぞれ撮影しました。ノズル近傍ではまとまっていた燃料が,下方にいくほど分散していく様子がわかります。

Fig.3 ノズル出口近傍の様子 (画像間の時間間隔は500 ns)

Fig.4 ノズルから1 mm下方の様子 (画像間の時間間隔は500 ns)

Fig.5 ノズルから2 mm下方の様子 (画像間の時間間隔は500 ns)

Fig.6 ノズルから4 mm下方の様子 (画像間の時間間隔は500 ns)
■ 壁面への衝突の様子
ノズルから噴霧された燃料は,最終的にはシリンダ壁面に衝突します。Fig.7に燃料のシリンダ壁面への衝突の様子の動画と画像を示します。Fig.7の画像(2)において約40 µmの液滴が壁面に衝突する様子を鮮明に撮影することができました。衝突後に生じた液滴の中には画像(9)の矢印が示すような10 µmの大きさの液滴も確認できました。
データ提供:岡山大学 大学院自然科学研究科・産業創成工学専攻・先端機械学・講座動力熱工学 河原先生

衝突の画像(画像間の時間間隔は500 ns)
Fig.7 壁面への衝突の様子 (画像間の時間間隔は500 ns)
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