警察の鑑識で行われている自動車の塗膜片の測定は,塗膜片の一部をかき取って透過法で行なわれています。自動車の塗膜は上塗り,中塗り,下塗りの3 層構造になっていますので,実際には各層からサンプリングして測定をすることになります。このサンプリング操作は,コツを要する操作でもあり,そのやり方によっては,スペクトルの質が変わることもあります。
試料の大きさが数mm程度以上であれば,塗膜の端をサンドペーパーで削り出すことができるので,顕微ATR法を利用することができ,面倒なサンプリングを省略することができます。
 ここでは,サンドペーパーで削り出した自動車塗膜の三つの層を顕微ATR 法で測定した例をご紹介します。
各層にATR 対物鏡のプリズム(Ge製)を押し当てて測定をしました。
上塗り,中塗り,下塗りのスペクトルを測定しました。
図2に中塗りのスペクトルを示します。

図1:サンドペーパーで削った自動車塗膜の模式図

図2:中塗りのATRスペクトル