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はじめに

XPS(X 線光電子分光法:X-ray Photoelectron Spectroscopy)は、物質表面の化学特性を評価するためのツールとして広く利用されています。イメージング手法をはじめとするここ最近の装置開発により、その利用範囲はさらに広くなっています。 商用や工業用繊維製品の分野において、産業界および一般消費者の要求に応える表面処理・コーティングの開発や最適化は、とても重要な課題です。これを助ける表面解析手法の一つとして、XPS は重要な位置を占めるようになりました。 ポリプロピレンやポリエステルなどでできたポリマーメッシュは、ヘルニアやその他の軟組織の欠陥を外科的に治療する際に用いられます。メッシュ材を用いることによりこの種の外科手術が進歩しましたが、それに伴って、移植が原因の感染症が発症する率も高くなりました。このようなメッシュから来る感染率を下げるためには、材料表面の特性を改善する必要があります。 医療繊維表面への機能付与やコーティングには、低圧プラズマおよび大気圧プラズマの利用が重要度を増しています。プラズマ処理によって、バイオフィルムやバクテリアとの接着性を下げた(もしくは制限した)新しい繊維材料が生産され、外科的手術や衛生面で応用されています。 ここでは、プラズマ表面処理を施した医療用繊維材料を、XPS を用いて分析した例をご紹介します。

2020.09.29