
Hyper Vision HPV-X2
液中放電は、変圧器に用いられる絶縁油中や放電加工用の液体中などの絶縁破壊で見られる現象で、数多くの研究が行われてきました。近年では、水中放電が注目され、水質浄化や手術など、環境や医療分野への応用が進んでいます。しかし、これらの応用の基礎となる放電がどのように液体中を進展するのかについては、電子論的破壊理論と気泡的破壊理論が提案されているものの未だ解明されていません。一因として、ストリーマと呼ばれるスパーク放電の前駆現象が高速かつ微小領域で起こる現象のため、実験的に明らかにするのが困難であったことが挙げられます。しかし、近年の撮影技術の向上により、これらの現象が明らかになりつつあります。 一般的に、水中正ストリーマは、1次ストリーマと2次ストリーマの2種類が発生することが知られています。水の導電率が低くなると1次ストリーマは半球ブラシ状の形状で秒速2km程度で進展し、その後樹枝形状を有するフィラメント状のチャネルが進展します。一方、2次ストリーマは、樹枝形状を有するフィラメント状のチャネルが秒速20~30kmの高速で進展した後、1次ストリーマと同様に秒速2km程度で進展します。 高速で進展しているときには、放電電流に直流成分が現れるため、1次ストリーマとの違いを判別することができます。ストリーマが進展して対向電極に到達すると、電極間が気泡チャネルで繋がり、スパーク放電に移行します。また、ストリーマはある一定以上の電界に達すると発生することが知られています。高電界を形成する機構は、ストリーマの発生前に電極先端に気泡群が形成され、気泡中への電荷の蓄積と電界集中を起こすための突起状気泡の形成が起こることが明らかになっています。しかしながら、ストリーマ発生前の気泡進展過程は、高フレームレートで高感度・短時間露出、さらには連続撮影枚数が多いことが必要となるため、一連の変化を連続で撮影することは困難でした。 今回使用した高速度ビデオカメラHPVTM-X2(以下、HPV-X2)は、最高で1000万コマ/secでの撮影が可能であり、高感度のセンサーを有しています。今回は、電極先端部の気泡群形成から水中正1次ストリーマが発生するまでの過程と1次ストリーマが進展しスパーク放電に至る様子、さらには気泡が膨張する過程を連続的に撮影した結果をご紹介します。
2018.06.25
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