
DSC-60 Plusシリーズ
近年、光エレクトロニクスの分野において高い透明性を有する無機や有機のアモルファス材料が注目を集めています。特に、分子量の比較的小さな有機物で構成されるアモルファス分子材料(Amorphous Molecular Materials)は、均質性・成形加工性にも優れた次世代の光学機能材料としての応用が期待されています。 これまでベンゼン等に代表されるπ共役系をもち、室温以上で安定なアモルファス構造を形成する有機分子は、有機ELの発光層や電界効果トランジスタ(FET)材料として用いるための研究が行われてきました。その代表例として、TriphenylamineやTriarylbenzeneを基本骨格とした3回対称軸(C3-軸)を有する有機分子が系統的にガラス転移を示すことが知られています。C3対称型有機分子の中では、300˚C以上の高温でも安定なアモルファス状態を形成するものも報告されており、これらの分子はπ共役系や置換基を調整することで発光色をコントロールすることが可能です。一方、有機分子発光体は半値幅の広いブロードな発光スペクトルを示し、色純度の高い鮮やかな発光色を発現させるのが難しいことが知られています。塗布可能で鮮やかな発光材料を開発するためには、より先鋭で強い発光を示し、光学的に透明なアモルファス状態を形成する分子が必要とされています。 そこで我々は、4f軌道間の遷移に起因した色純度の高い発光を示す希土類錯体によるアモルファス性分子の設計を行いました。通常、希土類錯体のほとんどは結晶性分子です。これらはPMMA(ポリメタクリル酸メチル)等のポリマー媒体中に分散させることで透明性が確保され、発光材料として利用することができますが、その光物理的特徴はバインダーによって大きな影響を受けることになります。そこで、発光性の希土類錯体のみでアモルファス状態を形成することができれば、結晶粒界からの散乱が起こらない強発光で透明な発光材料を構築できると考えました。 ここで、希土類錯体を「希土類元素ブロック」とし、その希土類元素ブロックを連結した分子集合体の設計を示します。120˚に曲がった有機配位子で架橋することで、アモルファス化に適したC3-軸を分子全体に導入した新しい分子性アモルファス材料が創成できると考えました。この分子は結晶性をもたないことが予想され、通常の錯体におけるX線を用いた構造と物性に関する議論が非常に困難です。そこで、質量分析・量子化学計算による構造の推定と同時に、分子表面の形態観察や熱物性(分解・相転移)測定を行い、新しいアモルファス分子材料の機能を評価する必要がありました。本研究では錯体の構造と物性を系統的に比較するために、ベンゼンのオルト位、メタ位、パラ位を用いて架橋した3種類の希土類元素ブロック集合体について、多角的な評価を行いました。
2017.01.21
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