
Hyper Vision HPV-X2
近年、地球温暖化などの環境問題の観点から、輸送機器の燃費改善のための軽量化が希求されています。その解決策の一つとして、他の構造材料に比べて軽量なマグネシウム合金を用いることが挙げられています。マグネシウムは密度1.73 g/m3とアルミニウムの約 2/3、鉄の約 1/4 で、実用金属材料中で最も小さい値を示します。さらに比強度、比耐力、振動吸収性、放熱性、寸法安定性、電磁遮蔽能、切削性、リサイクル性などに優れるという利点を持っています。しかしながら、一般的なマグネシウム合金は六方最密充填構造(HCP 結晶構造)を有することから、他の結晶構造と比較して、室温における大規模な塑性変形は容易ではありません。またアルミニウム合金と比較して機械的特性における優位性が少ないため、実用化が進んでいません。 2001 年に開発された Long-Period StackingOrdered(LPSO)型マグネシウム合金は高強度・高耐熱性・難燃性が同時に達成されており、盛んに研究が進められています。急速凝固粉末冶金法によって、Mg97Zn1Y2 に対して LPSO 構造を発現させました。LPSO 構造とは長周期積層構造と訳される通り、従来のマグネシウム合金と比較して長いスパンの原子配列を有する構造のことを指します。 この LPSO 構造内では微小領域においてキンク変形と呼ばれる変形機構が生じることが報告されており、キンク変形帯の形成が高強度化に寄与すると考えられています。LPSO 単相組織を有する一方向凝固材における圧縮試験を行い、変形帯が起こす方位変化を調査しました。変形帯にて生じた方位変化は双晶変形のような決まった値を取らず、広い分布を有したことが示されました。このことから変形帯は双晶変形ではなくキンク変形に起因すると述べています。一方で、LPSO 相を含む Mg-Al-Gd 系合金で形成される特徴的な変形帯について、キンク変形ではなく双晶変形及びそれに続く結晶回転により形成されたものであるとの見解を示しました。ここで生じている双晶は {112ത1} 引張双晶というマグネシウムやその合金ではほとんど報告されていない双晶系であり、LPSO 構造がこの双晶系の生成に重要な役割を果たしている可能性があります。このように LPSO 相のキンク変形については未だ不明な点が多く、LPSO 型マグネシウム合金の更なる合金開発に向けては、このキンク変形の詳細な挙動を解明することが必要となります。
2018.10.21
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