質量分析イメージングによるショウジョウバエ成虫脳内の GABA の可視化

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はじめに

キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster、以下ショウジョウバエ)は生物学の様々な分野で用いられるモデル動物として知られています。モデル動物としての利点の例は、生活環が約 10 日と短いことや遺伝子組み換え手法が確立されていること、さらに飼育や新規モデル作製に費用がかからないこと、動物倫理的障壁が無いことなどが挙げられます。特に、遺伝学的知見と遺伝子組み換え手法が確立しているという利点に基づき、神経変性疾患のモデル生物としてアルツハイマー病やパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの疾患研究で広く用いられています。 神経変性疾患では神経伝達物質が非常に重要な役割を果たします。例えば、γ-アミノ酪酸(GABA)は抑制性神経伝達物質として様々な生物学的行動や神経変性疾患に影響を与えることが知られています。脳内の GABA の濃度だけでなく、脳内の局在を調べることは脳内における GABA の機能を知るうえで重要です。そのたショウジョウバエ頭部のGABA の局在情報は、様々な疾患モデルにおいて GABA の機能を理解するために重要だと我々は考えています。 ショウジョウバエ頭部の GABA の局在情報を調べる手法として免疫化学染色や蛍光標識を用いたイメージング手法がとられていました。しかしながら、これらの従来法では主に GABA 産生酵素である GAD13)や GABA トランスポータ4)を可視化していることになり、間接的に GABA の分布を可視化していることになります。すなわち、GABA そのものを直接見ていることにはなりません。そこで近年、質量分析で直接対象分子を検出するマトリックス支援レーザ脱離イオン化-質量分析イメージング(MALDI-MSI)が哺乳類以外のモデル生物での生体分子可視化で注目されています。

2019.09.11

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