ライフサイエンス
微量な病原体遺伝子の検出・同定 ウイルス検出におけるリアルタイム PCR の落とし穴と電気泳動による確認の重要性
MultiNA の活用
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はじめに
感染症は細菌,ウイルス,真菌,寄生虫などが人の体内に侵入することで起こります。患者さんの病気が起こっている部位から病原体を検出して病原体が何かを明らかにすること(同定)は,その原因を明らかにし,治療や感染拡大防止に役立てることができます。 国立感染症研究所 感染症情報センター 第四室では,原因不明疾患における病原体検索を日常的に実施しています。その際に,大変微量な病原体を検出することもあります。例えば,発症から時間が経った患者さんの場合では,ウイルス量が痕跡程度しか検出されない場合もあります。感度が高く,正確な検査法は重要です。そのため病原体を迅速に検出・同定する手法としてリアルタイムPCRが盛んに用いられています。 リアルタイムPCRには大きく分けて,①インターカレーション法(*1)と②ハイブリダイゼーション法(*2)に分けられます。現在,スクリーニング法としていずれかの方法を用いることが多いですが,一度に多項目の検査ができる②のハイブリダイゼーション法が多く用いられる傾向があります。 しかしながら,このリアルタイムPCR法でウイルス量が極微量な場合,陽性であるにもかかわらず陰性と判定されてしまうことが時々見られます。 本稿ではこのようなリアルタイムPCR法の落とし穴とその電気泳動による確認の重要性について述べたいと思います。
2016.07.11