LCMS-IT-TOFによるフラボノイド類の精密質量分析
はじめに
フラボノイド類はポリフェノールの一種で果物,野菜,穀物,種,木の実,及びワインや紅茶のような飲物に多く含まれています。香料や色素として古くから食品,化粧品に使われていましたが,人間にも抗酸化作用,ホルモン促進作用などの効力を与えることが近年明らかになり,様々な種類のポリフェノールが発見・抽出・開発され,医薬品,健康食品として多くの商品を生み出し,健康ブームを巻き起こしています。 生理活性のある微量のフラボノイド類を天然物から見つけ出し,単離・精製の後,構造決定するまでには多大な労力を必要としますが,LCMS-IT-TOFを用いた精密質量MSn測定では,単離・精製なしに高精度の分子量情報およびフラグメントイオンからの構造情報を得ることができます。また,既存のTOF型質量分析計はその多くが内部標準法により高い質量精度を実現していましたが,LCMS-IT-TOFではBIE(Ballistic Ion Extraction,特許US6380666,他)や装置内部温度調節機構などの独自技術により,外部標準法で長時間安定した質量精度を得ることができます。 ここでは,みかんのメタノール抽出物をLCMS-IT-TOFで分析し,フラボノイド類の構造解析を行った結果をご紹介します。Fig.1にUVおよびMSクロマトグラムを示しました。オートMS/MS機能を用い,自動的にプリカーサーイオンを選択しながら,一度の分析でMS3まで測定を行いました。MSnのマススペクトルを解析することにより,配糖体の種類および数や位置,アグリコン部分の構造などを推定することができます。
2007.06.17