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はじめに

核酸(DNA,RNA)は,プリンおよびピリミジン塩基,糖,リン酸からなるヌクレオチドが重合した高分子で,生体内で遺伝情報を担う成分として重要な化合物です。このほか核酸関連化合物である塩基・ヌクレオシド・ヌクレオチドは,遊離の状態で生合成・物質代謝など様々な生物学的機能の発現に関与しており,個体内で常に一定に保たれるよう調節されています。 プリン骨格を含む核酸成分であるプリン体は,体内で代謝されXanthineを経由し,ヒトでは最終的に尿酸(uricacid)となり,その一部は尿中に排出されます。通常,尿酸は血液中で一定濃度に保たれていますが,何らかの条件で過剰な状態(高尿酸血症)となると,結晶として関節などに蓄積し,痛風を引き起こす原因ともなっています。これ以外にも核酸成分の関与する種々の代謝異常症が知られており,血液・尿など生体試料中の核酸成分の分析が行われています。 塩基およびヌクレオシドは,一般にイオン交換や逆相モードHPLCで分離し,紫外吸収により検出を行います。ここでは質量数情報が得られ,高感度であるLC-MSを用いた核酸関連化合物の分析例を紹介します。 Fig.1にプリン塩基の一つAdenineと,ヌクレオシドのAdenosineの構造式と,ESIマススペクトルを示します。酸性条件下,正イオンモードで,いずれもプロトン化分子(M+H)+が基準ピークとして観察されます。次に核酸標準品混合物のLC-MS分析結果をFig.2に示します。各核酸成分の(M+H)+を検出イオンとして,SIM測定を行いました。15成分の良好な分離が得られています。

2008.03.17