LC-MSによる下痢性貝毒(DSP)の分析
ダウンロード
はじめに
下痢性貝毒(Diarrhetic Shellfish Poison,DSP)は,2枚貝が渦鞭毛藻Dinophysis fortiiやDinophysis acuminataなどの有毒プランクトンを摂取したさいに中腸腺に蓄積される物質で,嘔吐・下痢・腹痛を伴う急性の胃腸炎を起こします。通常,人が摂取する量では死亡はしませんが,家庭料理程度の熱処理では分解しないといわれています。代表的な下痢性貝毒はオカダ酸(Okadaic acid, OA),ディノフィシストキシン(Dinophysistoxin, DTX),ペクテノトキシン(Pectenotoxin, PTX),イェッソトキシン(Yessotoxin)などで,複雑な構造をしているうえ,適当な発色団を持たないため,その分析は結構厄介です。日本では生物検定法であるマウス単位法が公定法となっていますが,蛍光誘導体化後HPLCで分析する方法も良く知られています。 ここでは,LC-MSによるOA,DTX-1,PTX-6(Fig.1)の分析例を紹介します。OAの正および負イオンESIマススペクトルをFig.2に示します。負イオンESI法では脱プロトン分子(M-H)-が明瞭に観察されます。正イオンではナトリウムイオン付加型分子(M+Na)+のほか,プロトン化分子より水分子が1~4個脱離したフラグメントイオンが確認されます。
2008.03.17