LC/MS によるポリマー添加剤イルガノックス類の一斉分析

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はじめに

イルガノックス類は抗酸化作用,熱安定作用を期待したポリマー安定剤(添加剤)で,非常に多くのポリマー製品に利用されています。イルガノックスは単独で用いられるだけでなく,新しい性質を付加するため,ブレンドして利用する場合も多く,どのような割合で利用するか?には多くのノウハウが詰まっているそうです。 イルガノックス類は,3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl構造を有していることから,負イオンエレクトロスプレー(ESI-Negative)でイオン化可能です。ESI-Negativeモードでイオン化効率を上げるためには,中性ないし塩基性の移動相条件が適していますが,逆相系のカラムを分離に用いた場合,イルガノックス類のカラムに対する保持が非常に強いため,酸の添加なしでは,目的成分が溶出されなかったり,ピーク形状を著しく損なう場合があります。ここでは,GPCカラムを用いることにより,成分の吸着を抑制し,中性移動相条件下でESI-Negativeイオン化を行っています。 Fig.1には11成分のイルガノックス混合物のマスクロマトグラムを示しました。いずれも脱プロトン化分子を明確に与えることから,その質量情報と保持時間により化合物を定性することが可能です。また,添加剤中に含まれる不純物の確認などにも利用できます。ピーク3はイルガノックス中に含まれる不純物です。代表的なイルガノックスのマススペクトルをFig.2に示しました。

2002.12.02