環境
トリプル四重極型LC/MS/MS を用いたハロ酢酸類9 成分の分析
はじめに
ハロ酢酸類は,浄水処理における塩素処理によって生成する消毒副生物です。モノクロロ酢酸(MCAA),ジクロロ酢酸(DCAA),トリクロロ酢酸(TCAA)の3 成分に関しては,水道水質基準においてそれぞれ基準値(MCAA: 0.02 mg/L,DCAA: 0.04 mg/L, TCAA: 0.2 mg/L)が定められています。 従来ハロ酢酸類の試験法(告示法)としては,溶媒抽出後にジアゾメタンでメチル化しGC/MS で分析する手法が収載されていましたが,平成24 年厚生労働省告示第66 号によりLC/MS(/MS)を用いた分析法が新たに追加されました。このLC/MS(/MS)試験法ではGC/MS 法で行われていた溶媒抽出操作および誘導体化操作を省略してサンプルをLC/MS(/MS)へ直接注入するため,分析作業負荷の大幅な軽減が期待されます。 ここではLC/MS(/MS)試験法に則り,トリプル四重極型質量分析計LCMS-8040 を用いて,水質基準の対象である上記の3 成分に要検討項目の含臭素ハロ酢酸類6 成分を加えたハロ酢酸類9 成分の一斉分析例をご紹介します。 標準溶液0.001 mg/L のMRM クロマトグラムを示しました。各成分の0.001–0.2 mg/L における検量線直線性および0.001 mg/L におけるピーク面積値再現性(n=3)をに示しました。いずれの成分も良好な直線性が確認され,また0.001 mg/L おける面積値再現性(%RSD)は5 % 以下でした。 実際の水道水試料を用いて各ハロ酢酸類の定量と添加回収試験を行いました。試験法では検水中に高濃度の陰イオン類が含まれる場合には,必要に応じて検水のクリーンアップを行う旨が記載されていますが,今回の水道水直接分析については水道水中の夾雑成分による顕著な妨害は確認されず,90 ~ 110 % の良好な回収率が得られました。
2013.03.14