高分解能MALDI-TOF MS “MALDI-7090” を用いたO- 結合型糖ペプチドの糖鎖結合部位決定

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はじめに

生体で合成されるタンパク質は,その多くが糖鎖修飾を受けています。この糖鎖はグルコースやガラクトースなどの単糖が複雑に結合した構造不均一性の高い分子で,N- 結合型あるいは O- 結合型の糖鎖と区分されています。この一群の糖鎖はタンパク質の機能調節という重要な働きがあることが知られており,バイオ医薬品などの開発では糖鎖修飾についての情報を得ることが必須となっています。 糖鎖修飾情報の 1 つに,糖鎖がタンパク質のどこに結合しているかという情報があります。N- 結合型糖鎖の場合,-NXS/T- という共通のアミノ酸配列が知られており,N- 結合型糖鎖の潜在的結合部位を見出すのに利用されますし,糖タンパク質をプロテアーゼ消化した消化物から糖鎖結合特異性のあるレクチンで糖ペプチドを捕集し,捕集した糖ペプチドから H218O 存在下で N- 結合型糖鎖脱離酵素 PNGaseF を作用させ,N- 結合型糖鎖結合部分を安定同位体標識して分析する方法 1)や,N- 結合型糖ペプチド特異的なプロダクトイオンを用いた MSn 分析 2)により結合部位を特定する方法がとられます。一方で,O- 結合型糖鎖と呼ばれる一群の糖鎖に関しては,タンパク質上のセリン/スレオニン側鎖に結合することは知られていますが,その周辺配列に関する情報にはいまだ未知な部分が多く,また,N- 結合型糖鎖に対するように適した酵素はいまだなく,特異的なプロダクトイオンも見出されていないために,その結合部位特定は困難なものとなっています。 そこで,本稿では,複数の酵素による部分消化と高分解能MALDI-TOF MS ”MALDI-7090” による O- 結合型糖鎖の結合部位特定方法についてお示しします。

2016.05.31