MALDI-8020
バイオ医薬品中の糖鎖評価法の検討2- N-glycan 分析に必要な前処理の検討 -
はじめに
タンパク質性のバイオ医薬品の多くは真核生物由来の培養細胞で生合成されます。そのため、合成されたタンパク質はほとんどの場合、糖鎖が結合した糖タンパク質として存在します。この糖タンパク質に結合している糖鎖は主にN-結合型糖鎖(N-glycan)とO-結合型糖鎖(O-glycan)に大別され、それぞれ多様で複雑な分岐構造を持っています。 糖鎖の構造は糖タンパク質の機能や安定性に影響を与えることが知られています。そのため培養環境の変化などにより、合成した糖タンパク質に結合している糖鎖の構造が変化してしまうと、糖タンパク質自身の機能や安定性に想定外の変化が起こってしまう可能性があります。このような可能性は、特にバイオ医薬品の開発・製造においては重大な問題に繋がりかねないため、糖鎖構造が変化しているか否かをモニターすることが品質を管理する上で重要な項目となります。 糖鎖構造の変化を正しく分析・評価するためには、本来の糖鎖構造がしっかりと把握されている必要がありますが、糖鎖分析では前処理方法が様々に存在する上、標準化もされていないため、同じ糖タンパク質であっても前処理方法の違いにより糖鎖分析の結果が異なってしまう可能性があります。本稿では、N-glycan分析の際に広く用いられている前処理方法のいくつかを比較し、それらが分析結果にどのような影響をおよぼすのかを検討した結果を報告します。
2021.03.28
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