カラムスイッチングHPLCを用いた環境水中ビスフェノールAの高感度分析

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はじめに

数々の工業製品に使われるポリカーボネート樹脂の原材料であるビスフェノールAはまた,内分泌撹乱物質,いわゆる環境ホルモンの疑いのある物質としても知られています。このビスフェノールAの環境ホルモン作用は非常に微量でも生体に影響するという研究結果も報告されています。環境中のモニタリングの指標は10ppt(ng/L)程度とされており,さらにこれ以下の濃度での分析が必要な場合も考えられます。このような低濃度を測定するためには,液-液抽出による前処理濃縮法が一般に利用されており,煩雑な前処理操作の手順が必要になります。一方,固相抽出カートリッジを用いた固相抽出も考えられますが,分析まで含めた自動化には困難があります。今回,これらの問題を解決する方法としてポリーマー系逆相カラムを前処理濃縮用カラムとして装着した自動前処理システムによるビスフェノールAの簡便な自動濃縮分析方法をご紹介します。 ビスフェノールAの分析はGC-MS法でもよく行われていますが,分析に必要な誘導体化反応に時間がかかるため,より簡便な方法としてHPLC法が用いられます。この時,前処理には上述した問題がやはり存在します。また,ビスフェノールAはUV検出器や蛍光検出器による検出も可能ですが,複雑な共存成分が予想される環境水中の分析であるため,より,選択性と高感度が期待できる電気化学検出器を用いて分析を行いました。(Y.Watabe)(参考文献:渡部,森田,今井,近藤:環境ホルモン学会第3回研究発表会要旨集,2000.12.)

2008.06.02

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