絶縁油中の添加剤 ベンゾトリアゾール、トリアゾール誘導体とフラン化合物の 一斉分析

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はじめに

変圧器やコンデンサには導体との絶縁と内部の冷却のために絶縁油や絶縁紙が使われています。これらの絶縁体は⻑期の運転や⾼温への暴露によって劣化し絶縁性能が低下すると機器の故障の原因になるため、定期的に劣化検査を行い、機器の状態を判断する必要があります。絶縁紙は機器に固定されているため取り出すことが難しいですが、絶縁油は交換可能なため、絶縁油の分析により機器の状態確認を行います。 その分析項目の1つに、添加剤成分の定量があります。ベンゾトリアゾール(1, 2, 3-Benzotriazole; 以降BTA)やトルト リアゾール誘導体( N-bis[2-ethylhexyl]-aminomethyltolutriazol; 以降TTAA)はPassivator (金属不活性剤)として絶縁油に添加されます。これら添加剤の有無で硫化腐食などの機器の劣化リスクが変化するためBTAやTTAAの定量を行います。この定量は英国規格(BS148:2009)でHPLCを用いた測定方法が示されています。 また、巻線の被膜として使われる絶縁紙の主成分はセルロースです。機器の運転による⾼温と劣化した絶縁油に含まれる水分や酸素によって分解され、フラン化合物が絶縁油に溶け込みます。そのため絶縁油中のフラン化合物の濃度は、電気機器の劣化指標として使用されています。この分析もASTM D5837-15でHPLCの分析法が示されています。 今回は添加剤、フラン化合物の分析方法について、ASTMやBSを基に⼀⻫分析のため最適化しました。⼀体型HPLC“ProminenceTM-i”を用いて絶縁油中のBTA、TTAAとフラン化合物を⼀⻫分析した例をご紹介します。

2020.09.29

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